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zoom RSS 砂漠で見る夢は…

<<   作成日時 : 2007/01/30 22:18   >>

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  目の前に広がる、まさに「茫漠」という言葉が当てはまるような砂漠の広がりに刻生・F・悠也は呆然としていた。広い、広すぎる。海は広いな、大きいなというがここの砂漠も負けてはいない。いや、絶望の大きさなら、海よりも砂漠だ。

 何故なら、彼は

「ここ、どこー!!!」

  迷子だったから。

 そもそも彼がなぜここに居るか、という事から説明をしよう。それは一日前のこと。藩王フィーブルより先の北海島決戦の慰安として、出兵した者全員に藩国のツケによる旅行が許された。勿論、緊急事態に備えて旅行先は藩国内限定ではあったが、兵士達が喝采を挙げたのは言うまでもない。

 そして、出兵時はわんわん帝國側ではあったが、「仲間はずれにするのもなんだろう」という事で、刻生にも旅行の許しが出た。彼自身は「まぁ、犬を手薄な首都に置いておく訳にもいかないわな」と穿った見方をしたが、実際はこの藩国をもっとよく見て知って欲しいという首脳部の温情であった。


 安アパートに帰り、身支度を始める。といっても、荷物の少ない彼の支度は10分も掛からない。ネコミミ、集合写真、斬艦ハリセンの三つを鞄に放り込んで終わりである。

  旅行先はすでに決めてあった。北海島決戦地。既に一回行っているが、ガイド付きで行った為に詳しく調査することは出来なかった。今回こそ、あの子に繋がるものを見つけたい。その一心からの行動である。脳裏に地下大書庫で見た彼女の艶やかな長い黒髪と、頬を赤く染めた姿を思い浮かべる。刻生、鼻の下が伸びまくりである。


 結局、調査事態は徒労に終わり、ついでに遺跡でも見ていくか思ったのが、彼の不幸の始まりであった。遺跡へはまだ観光地としての整備が及んでおらず、その為に砂漠を徒歩で行くことにしたのが、そもそもの間違いであった。

 元々、砂漠を一人で行く事自体が自殺行為である。しかし、フィーブル藩国民にとってそれは常識であり、殊更それを刻生に注意するものはいなかった。そして、刻生は北国人である。船内暮らしと北国での暮らししか知らない&思いつきで行動する彼には、始めから地獄が待っていた。


そして今・・・。

「〜♪白あんこ。黒あんこ。粒なのがいいね〜」

 遺跡の崩れかけた壁の影の中で、呑気に十種あんこ味セットを開封して食べ始める刻生の姿があった。

  始めこそ焦ってみたものの、久しぶりの焦るという行為に彼はすぐ飽きた。そこで、腹が減ったので鞄を漁ってみることにした。すると、上級士官用の連絡装置を見つけたのである。ついでに、腹ごしらえとばかりに近所のガキんちょども用に買っておいた土産を開封、「許せ、子らよ、もぐもぐ」等と言いつつ食べている。

   「人間死ぬ時は死ぬ。自分にやれることやればいいじゃ〜ん♪」

  後にこの男、こう述懐する。全くもって適当である。



 数時間後。ヘリのローター音がし、降下してくる。扉を開けて勢いよく出てきたのはジョン=ウォーカーである。顔を心配という色で染め上げ、人の良さそうな顔が歪んでいる。 

 「大丈夫ですか?」
 「あ、ゴメン。手間取らせて」

  刻生、手に付いた白餡を舐めながら答える。「砂のあるところで食事を取るべきじゃないね〜」などと余計な一言も付け加える。ジョンは慌てて新しい仲間を救わんと急いで直行したのに、がっくしである。

 「えっと、もっと精神錯乱とかしてた方が良かった?」
 「いや、そういう訳では」
 「信用してたから」
 「え?」
 「この藩国はさ、いい国だよね。だから、きっと助けに来てくれると思ってた」
 「あ、あの」
 「さ、帰ろう。あ、それとこのあうどむら焼き、どう?結構うまい」
 「…どうも」

  口に入れたあうどむら焼きが少ししょっぱい。ジョンは刻生の言葉に、ちょっと感動で涙ぐんでいたのだ。多感な青年である。


  翌日、彼の迷子話は藩国中に知れ渡ることとなる。にゃんにゃん共和国に場所を移しての「刻生・F・悠也 はた迷惑伝説 第二章」の始まりであった。


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フィーブル藩国/国立図書館
2007/02/06 21:20

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