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zoom RSS 希望に胸を張り

<<   作成日時 : 2007/02/06 20:24   >>

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 食料増産と言って、配給制にしようと言い出したのは、最近この国に仕官した旅の詩人であった。
 ぶっちゃけた話、全然増産できて居ないと言うが、国が持つ食料の数字だけは増える、数字のマジックと言う奴である。ていのいい詐欺とも言う。

 配給と言っても、昨今の我々が想像するような、飢餓が支配する、貧乏な食生活を国民に送らせるわけにはいかない。子供が泣いては良くないというのが持論である詩人ではあるが、国民の中には子供も老人も女性も居る事は判っている。
 しかし、かといって、戦争の不安におびえる国民が、その不安を抑える為、暴動的な食料購入に走り、結果必要な人に行き渡らなくなる、というのは、非常に恐ろしい事であった。
 だから、必要な分の食料を予め確保しておき、必要に応じて国民に、必要な分だけ配る。残りは確保する。と言うのが、まぁ理想論だった。
 理想論というからには、実行には大変な困難を伴う。だって、国民に「贅沢をするな」「俺たちの指示に従え」と強制するようなものである。
 ……はずだったのだが。

「何をいっとるですか。藩王様のお達しならば、もっと安くしてもいいとですよ」
 想定外の事態であった。
 国民側に、「理解がありすぎた」のである。

 ぶっちゃけた所、非難囂々、人に非ずのような政策に、唾を吐かれて仕方ないつもりで、決死のお参りに来たつもりだったのである。
「国が滅びるか滅びないかって時なんだ。協力くらいならいくらだって出来ますぜ」
「調子のいいこといいやがって。うちならもっと安く出来るぜ!」
「そういや、甥っ子のやっている工場ならツテが聞きますから、私が一つ連絡を入れておきましょう」
 何か目の前の農業組合の方々が大盛り上がりしている中、唯一取り残されていたのが発起人である詩人その人であった。
「ええと、その、皆さん、いいんですか、ほんとに?」
 何か、変な誤解を与えてしまったのではないかと、あわあわしながら声をかける発起人。
 組合の方々はきょとんとして、次に大笑いした。
「ははぁ、お兄さん、確か最近この国に来たって人だろ?」
「つまり藩王ご一家と我々の結びつきの強さと言うものをご存知でない」
 どういうことですか、と二の句を告ぐ前に、その中の老紳士は語った。
「我々はね…特に、ここらへんで農業とか、漁業とかをやっている連中はね。昔から、藩王家と一緒にやってきた、いわば同志なのですよ、若い方。この国はこんな小さく、しかも自然が厳しい。今は随分安全になりましたが、私が子供の頃はもっと酷いものでしたし、私の爺さんの代には戦争も何度かあったそうです」
 ああ、それは、この国に来る前の情報として、聞いた事がある。
 この辺境の砂漠のオアシスに、フィーブルと言う国が成り立ったのは、ひとえに地下の鉱物資源のおかげであると。その利権を巡って争いも何度も起きて、それを乗り越えて来たのだと。
 情報としては聞いていたのだ。しかし、それを本質的な意味で理解したのは、今この瞬間ではなかろうか。
「若い方、異国の方。存分におやりなさい。このような政策を考えられたのは、おそらく御優しい藩王様でない事は、我々にだって想像くらいつきます。そして我が国に余分な生産力が無いということは我々がこの国で一番理解している」
「そんで、今が、無理のしどころだって言う事もな」
「サイボーグ歩兵にはなれなかったけどよ、俺たちだって、一端のフィーブル国民って奴でして、へへ」
 彼らは戦闘要員ではない。戦場には出れない。しかし彼らの顔は、自分が慣れ親しんだ、どんな軍人にも負けていないほど、精強だった。
「あきらめずに希望に胸を張るのが、我が国の矜持です。若い方、我が国にいらしたのであれば、貴方も胸を張って歩きなさい」
 すいません、ちょっと今日まで、藩国助けに来た俺ってカッチョイーとか思ってました。
 今日、完膚なきまでにかっこよさで負けました。
「へぽにゃん、気合の入り方がちがうにゃー。何かあったかニャ?」
 政庁に戻り、隣席する役所の猫士が言う。尻尾をふりふりしてるので、何か興味があるのだろう。
「いや、たいしたことじゃないですけどね。それより、そんなに変わって見えました?」
「ここに来て、一番顔が笑顔ですニャよ」
 不覚にも、涙がにじんで、猫士に勝るダッシュでその場を逃げ出した。そして、3分の休憩の後、配給品の配分方法などの事務仕事に徹夜で明け暮れた。
 自分が戦場に戻ってきたことを、痛感した。すでにここは戦場なのだ。皆が、それを判っていた。


【フィーブル藩国の食料は、一部限定的な配給体制を整える事で、過不足なる国民に行き渡る手配が整いました。体制整備の中で洗い出された過剰供給分3万t(3割程が国民の善意による進呈と言われる)が、配給品とは別に国庫に入ります】

 (文:へぽGS)

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2007/02/06 21:04

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