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zoom RSS アメショーと踊る日 第一話「新しい一歩」

<<   作成日時 : 2007/02/12 02:23   >>

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 ある晴れた日の早朝。政庁の藩王執務室の室内には、藩王フィーブルと刻生・F・悠也、そして王猫パーカーの姿があった。

 「うん。今日呼んだのは、アメショーの増産が為ったからなんだ」
 「ありがとうございます。シュミレーターとはおさらばですね」

 嬉しそうに言う刻生。パイロットの彼としてはやはり、一刻も早く実際に乗ってみたかったのだ。
 「シュミレーターでの訓練は大事だぞ」
 「まぁ、パーカー殿の言う通りなんですがね」
 「それと」
 「はい?」
 「公式行事でも無い限りは、他人行儀なのは止めてくださいと言った筈ですが」

 フィーブルは頬を膨らませ、文句を言う。実年齢に比べ、幼く見えるその行動はとてもかわいらしいものだった。
 それを見て、刻生は脳裏にかつての主を思い浮かべる。彼も目の前のフィーブルと同じく、年若いが立派な藩王であろうと努力していた。

  彼を支える。

  そう誓って仕官した筈だった。しかし、自分は己の想いに従った。後悔は無い。いや、それをすることは許されない。苦い想いを噛み締めて生きるのが、せめてもの償いだと刻生は思っている。

 「刻生…さん?」

 しばしの無言に、フィーブルは不安を覚える。彼には、刻生が時にひどく寂しそうに見えるのが心配であった。この優しさこそが、人種を問わないフィーブル藩国の国風を培っていた。

 「いや、なんでもないです。っと、なんでもないよ」
 「なら、よかったです」

 満面の笑みをフィーブルは浮かべ、つられて刻生も微笑を浮かべる。パーカーはやれやれといった顔をしながら、あくびをしていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 太陽が頂点に差し掛かる頃、整備工場にはロールアウトしたアメショーが五機、佇んでいた。そのうちの一機は、両腕の指先から肘の辺りまでが真っ赤に塗装されていた。
 その機体の前に立つ刻生。腰に手を当て、アメショーを見上げる。その視線はサングラスに隠され、他人からは伺えない。ただ、何か声を掛けづらい雰囲気のみがそこにはあった。

  「どう?にゃんにゃん自慢のアメショーは?」

 それをものともせず、でかあさは声を掛ける。

 「うん、甘そうだね」
 「アメと飴?」
 「…判りづらくて悪い」 

  答えながら振り返り刻生はぎょっとする。でかあさは以前会った時のモヒカンではなく、長髪ウィッグを付け、ポニーテールにしていた。それは朝の時点で見ていたので、それはいい。問題はその下の服装であった。

  「な、何、それ」

  指差す先には紺色のスクール水着の上からスパッツを履いた、でかあさ。見ると、先程は一緒にアメショーを見物していた人々も、妙に離れている。

  …みんなも慣れてはいないんだなぁ。

  刻生、心中で苦笑する。

「ほら、今日は悠也ちゃんと鉤生ちゃんのコーチだからね。それっぽい衣装を用意してみたのよ」

  「でかあさ」と書かれた白地の布が縫い込まれた胸を反らせ、ウィンクする。「お手柔らかに…」としか言えない刻生であった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  初めて搭乗したアメショーのコクピットへの違和感は無かった。シュミレーションのコクピットと全く同じだったからだ。座席のビニールを、はやる気持ちを抑えつつ剥がす。目を瞑ってもできるようになった起動操作をし、システムを立ち上げる。

  「起動、成功です」「にゃーん」

  コパイロットのぽるぼーらと猫士の声と、刻生のアメショーの眼部に光が宿ったのは同時であった。ゆっくりと歩みを進める。

  「はい、オーライ、オーライ」

  インカムを付けた生身のでかあさに誘導され、演習場への道のりを行く。帝國のトモエリバーよりも軽いとは言え、アメショーが歩みを進める度に大地は軽く身震いする。
  そして、それは二機であったから倍であった。こちらにはサイ=コーデルフィアと、刻生と同じく、初めてアメショーに乗る鉤生と猫士が搭乗していた。

  「刻生さん、本当に初めてなんですか?」
  「んー。まぁ、昔ちょこっとね」

  ぽるぼーらと軽口を叩きながら、刻生はアメショーを操縦する。

  「昔、ですか」

  そう言って「?」マークを浮かべるぽるぼーらを見ながら、刻生は笑う。まさか昔、戦場での小遣い稼ぎに擱座した共和国の機体を、裏ルートで売っていたとは言えない。それは自分の手が共和国民の血に塗れていることを言うに等しい。
 そう思いながら、懐かしいと思う。かつての艦内暮らしから一転、大地に根ざした暮らしに。その上、宿敵の共和国に身を置くことになるとは。

 「うん。生きていると色々あるね。過去も未来も」
 「はぁ、そうですね」

 刻生の言いたいことに見当が付かず、更に「?」マークを増やすぽるぼーら。 

 演習場は目前であった。

 次回 アメショーと踊る日 第二話「武人、二人」 

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2007/02/13 01:34

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
楽しく読ませて頂きました♪
あいかわらず、でかあささんは凄いなぁ(笑)

次回も楽しみにしてます!
ジョン=ウォーカー
2007/02/15 02:37
白地の布に名前付きとは(笑)

SS自体もとっても楽しかったです〜
でかあさ
2007/02/15 23:18

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