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zoom RSS リレーSS/第5回

<<   作成日時 : 2007/02/26 01:02   >>

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 今日のフィーブル藩国は休日。天気もよく、国民の大半は休日をエンジョイしていた。おなじみの街角の軽食店でも多くの人や猫が集まり、楽しい会話に花を咲かせていた。

「…………」

……ただ一人、ぽるぼーらを除いて。

ぽるぼーらは「日替わりランチ」と一言マスターに言ったきり、ずっとむっすりした顔で黙っている。ぽるぼーらは基本的にあまりペラペラ喋るほうではない。それにしても今日のぽるぼーらは周りには近づきがたいオーラを出しており、マスターも他のお客も扱いに困っていた。

(この間はジョンさんのせいでひどいめにあった。)
 
 この男先日のお化け騒動(リレーSS第4回参照)において恐怖のあまり気絶し、今日まで3日間自宅で寝込んでいた。そして今日幾分か回復したので気分転換に外食でもしようと思いこの店にやってきたのだ。

(僕のことをあんなに怖がらせておいて、喜ぶんだもんなー。)
(それにしても最後のあの女の人はいったい……)

「おまたせしましたー、日替わりランチです!」

そんなことを考えてるうちに注文の品ができたので、ぽるぼーらは考えるのをやめ昼食をとり始めた。

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「ふうー、満腹満腹♪」

おなかがいっぱいになったぽるぼーらは、すっかり普段どおりに戻っていた。この男、いつもうじうじ悩むくせに、結局「まあいいか」で結論付ける奴である。

「さてと、そうなると次の問題は……」
そう言って、鞄から先日ジョンさんからわたされた書類を取り出して読み始めた。そう戯言屋さんが作成した納涼計画の書類である。

「他の人に涼しいと言わせろかー」

 ぽるぼーらはまた面倒なことになったもんだと、ため息をついた。そしてとりあえずなにかいいアイディアはないかと、食後のコーヒーを飲みつつ考え始めた。

(僕も怖い思いをしたんだし、誰か他の人に秘蔵のホラービデオを見せようかなー?)

そう一瞬考えたが、直後に自分で却下した。もしそんなことになったらぽるぼーら自身もホラービデオを見なければいけなくなることに気づいたのだ。この男、前回の事件でお分かりのようにおばけは大の苦手である。(ちなみにその秘蔵のホラービデオはもともとぽるぼーらの物ではなく、ぽるぼーらと同じテレビ好きの友人が半ば無理やりに貸してくれたもので、ぽるぼーらはまだ見てなかったりする。)それに自分が迷惑に思ったことを人に行うのはよくないと思い、別の方法を考え始めた。


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「…………………………………………………………」

それから3時間、コーヒーは10杯目に突入している。結局一つの案も出ていない。

「はー、なかなか思いつかないもんだなー。まあいいか、気分展開にテレビでも見よう」

そうつぶやき、ぽるぼーらは鞄から携帯テレビを取り出した。ぽるぼーらはどこへ行くにもこのテレビだけは欠かさず持っていくのだ。何か面白い番組はないかと適当にチャンネルを回し始めたぽるぼーらはあるお宅訪問番組に目をとめた。その番組では昔ながらの和風住宅が紹介されていた。

(へー、なかなかいい家だなー。庭に池やあのカッコーンて音がする竹(鹿威しのこと)があるし、風鈴が縁側についている。なんか見ているだけで涼しくな……)

「これ、いけるかも……」

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「こんにちは、ぽるぼーらさん。今日はご招待ありがとうございます。」
「こ、こんにちは赤松さん。今日はわざわざ来ていただいてどうもすいませんでした。」
「いえ、そんな謝らなくても結構です。……それにしても珍しいですね、ぽるぼーらさんが招待してくれるなんて。」
「え、えぇ。そうですよね……。」

 軽食店で案を考えてから1週間後、ぽるぼーらは赤松遠心さんを自宅に招待した。もちろん納涼計画の次のターゲットに選んだからだ。今日この場で赤松さんに「涼しい」と言わせるつもりである。とはいっても別に無理やり言わせたり、前回のように怖がらせたりして言わせようとは思っていない。気が弱いのでそういう押しが強い方法は苦手なのである。だから今回の方法を採用した。

「で、でもせっかく家をリフォームしたので、ぜひとも赤松さんに見てもらいたかったんです。」

そうリフォーム、これこそが今回の作戦である。風をうけると音が出る風鈴、水がたまると竹筒が傾き石をたたいて音を響かせ鹿威し(ししおどし)、小さいながらも池までもがある。1週間前テレビで純和風の邸宅を見たときひらめいた。あの邸宅のような家に訪れればきっと皆少しは涼しいと感じるに違いない。また自分の家を直せば自身はずっと涼しい気持ちで入れられるので一石二鳥だ。そう考え、この1週間家の改築に取り込んできた。

「えぇ、とてもきれいですね。大変だったでしょう?」
「ま、まあそうですね……」

実際この1週間は苦労の連続だった。お金がないので業者に頼むこともできない。だから自分でリフォームの方法を調べて(主に劇的○ィホー○フターから)、必要な材料をそろえて(主にジャ○ネットた○たより)、挑戦してみた。けれどそんなに簡単にできるはずも無く一度は挫折しかけた。けれど途中でやめるのもどうかと思ったので、途中知り合いの猫士さんたちに手伝ってもらいなんとか今日の朝に完成にこぎつけた。おかげでぽるぼーらは寝不足で少し変なテンションである。あまりいい兆候ではない。

「そ、それよりどうですか。この家、何か思うところはありませんか?」
「感想ですか?うーん、えっとー、先ほども言ったようにきれいで素敵だと思いますよ。」
「あ、ありがとうございます。で、でもそうじゃなくて他に何かないですか?」
「他?他ですか……」
「例えばあの風鈴とか……」

ぽるぼーらは風を受けて、チリーンと澄んだ音をだす風鈴を示した。

「いい音ですよね。」
「い、いやそれは嬉しいんですけど……。じゃ、じゃああのししおどしはどうです。」

ししおどしは一定のリズムで動いている。石をたたく音のほかに、水の流れる音もかすかに聞こえてくる。

「ししおどしって趣がありますよね。好きですね、ああいうの。」
「そ、そんな大層なものでは……。すいません気を使わせてしまって。」
「いえいえそんなことないですよ。謝らないでください。それにこちらこそ大したこと言えなくてすいません。」
「そ、そんなこと無いですよ。変なこと言ってこちらこそすいません。」

赤松とぽるぼーら、共に口下手だったりする。

「そんなに謝られても困りますよ、ぽるぼーらさん。」
「…すいません。はっ!そうじゃなくて、他には?そうだあの池とか見て他に感じることはありませんか?」

池には小さいながら鯉が数匹泳いでいる。こればっかりはテレフォンショッピングでは無理だったので町中のペットショップを歩いて探してきたのだ。

「鯉ですか……良いですよね。見ていると癒されますよね。」
「そ、そうですよね。僕もそう思いま……って違――――――う!!」
「へっ?」
「確かにそうなんですけど、それ以外に何か思いつかないんですか?」
「他、他ですか?うーん。」
「鯉が元気に泳いでいるのを見て何か思うところがあるでしょう?」
「鯉を見てほかに思うこと……」

悩み始める赤松さん。対するぽるぼーらはもう後が無いので必死である。

「あ、そうか。そういうことか。」

何か思いついた赤松さん。

「そういうことです赤松さん!」

期待に胸膨らむぽるぼーら。

「いやー、この鯉…………」

(つ、ついに涼しいと言って貰えるのかー!)

「とってもおいしそうですよね。」
「……へっ?お、おいしそう?」
「はい、元気に泳いでいて活きが良く、とてもおいしそうですよね。もしかして今日この鯉でご馳走してもらえるんですか?」
「す、すいません。それは考えて無かったです……。」
「そうですか、ちょっと残念です。ん、どうしましたぽるぼーらさん?」

最後のチャンスも逃してしまった。それがわかった瞬間ぽるぼーらの中で何かがはじけた。

「ふっ、ふふふ……」
「ぽ、ぽるぼーらさん?どうしたんですか?」

ぽるぼーらの雰囲気の変化に戸惑う赤松遠心。

「そうですよ、そうですよ。勝手に期待した僕が馬鹿でしたよ。人それぞれ物事に持つ感想は違いますもんね。単に僕の作戦が拙かっただけですよ。いつもそうなんだよなー、あのときだってーブツブツブツ………………」

ぽるぼーら妄想モード突入

(な、なんかいやーな予感が……。)

「ぽるぼーらさん……大丈夫ですか?声が小さくて聞き取りづらいのですが……?」
「う、うるさーい!!」
「え?」
「うるさい、うるさい!俺が全部悪かったんだからほおって置いてくれよ!今はひとりになりたいんだー!」

そういって唖然とする赤松さんを尻目に暴走モードに突入したぽるぼーらは走り始めた。

「まさか、また暴走?」

赤松さんは前に戯言屋さん主催のパーティーでもぽるぼーらが酒によって暴走するのを見ている。(詳しくは第1回ロール大会参照)

「うわ――――ん!」
「ちょっと、ぽるぼーらさん!待ってください。」

もともとぽるぼーらに招待されてきた赤松さん、どうして良いのか分からずとりあえず追いかけた。

(もういったいどうすれば!?こういうハプニングには慣れてないのに……)

「こらー、ついてくるなー!」
「そういわれてもー!」

そのまま二人の逃走劇、追跡劇は疲れて動けなくなるまで1時間続いた。

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その後二人はくたくたになりながら、元の家まで戻ってきていた。

「き、今日は本当にすいませんでした!」
「いえ、そんなに謝らなくても……。こちらこそ混乱して追い掛け回しちゃいましたし。」

家に着いたころにはぽるぼーらも元に戻っていた。

(ふう、なんとか落ち着いてくれて助かった。ああなったぽるぼーらさんは手がつけられないんだもんなー。でも今日はお酒も飲んでないのに何で……?)

「いや……でも……」
「あれはあれで、いい運動になりましたし。それにしてもさっきのはいったいなんだったんですか?」
「いやーあはは……」
「?」

苦笑いを浮かべるぽるぼーら。

「そ、それよりも走り疲れたでしょう。冷たいお茶でもどうぞ。」
「ありがとうございます。ふうー、おいしいですね。」
「ええ、僕はもう喉カラカラでした。」
「私もです。おかげでさっきまで熱かったんですが、とても涼しくなりました。やっぱ運動した後は冷たいものに限りますね。」
「え?」

あまりに自然にその単語を発したので、一瞬本当にいったのか迷った。

「す、すいません。いまなんと言いましたか?」
「え、とても涼しくなったと言いましたけど?ぽるぼーらさんどうしました?ぽるぼーらさん?」

5秒ほどぽるぼーらの時間はとまっていた。そしてまた動き出した。

「あ、ありがとうございます!!!!」
「うわっ!」

ぽるぼーらは思わず大声でそう叫んだ。赤松さんはその声を不意打ちぎみに、しかも至近距離で聞いたので、かなり驚いた。

(びっくりしたー!何々?まさかまた暴走ですか!?これ以上は一人じゃもう無理です。誰か助けてー!!)

「す、すいませんいきなり大声出して。」
「へ、平気です……。それより何がありがとうなんですか?」
「気にしないでください。今日は来ていただいて本当に感謝しています。」
「はあ、そうですか。」

(よかったー、暴走はしてない。)

ほっと胸をなでおろす赤松遠心。

「それじゃあ日も暮れてきたのでそろそろ帰ります。」
「あ、ちょっと待ってください。」

そういってぽるぼーらは家の中から封筒を一つ持ってきた。

「これをどうぞ。」
「なんですかこれは?」
「帰ったら開けて中の書類を読んでください。そうすれば分かりますから。」
「はあ、そうですか。」

いまいち釈然としないようだか、赤松さんは封筒を受け取ると挨拶をして帰っていった。

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「ふう」

赤松さんを見送った後、ぽるぼーらは一息ついた。

(予定とは違ったけど、なんとか納涼計画は終わったなー。肩の荷が下りたよ。赤松さんは次にどんな風に他の人を涼しいって言わせるんだろう)

もう一杯お茶を入れ、縁側で今日のことを思い出している。

(けど……途中またやってしまった。戯言屋さんのパーティーに続きまた暴走してしまった……。あーもー何やっているんだ僕は!それに結局家をリフォームしたのってほとんど意味が無かったんじゃ……ブツブツ……)

結局次の日までぽるぼーらの猛省は続いたそうな。

                                   (了)
(文:ぽるぼーら)
(次回:赤松遠心)

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