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zoom RSS リレーSS/第3回

<<   作成日時 : 2007/02/04 22:29   >>

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「う〜ん。『涼しい』って感じてもらうのに、どんな方法が良いかな〜。」
ギンギンに照りつける黄色い太陽の下、商店街の建物の影を、けんけんぱするように飛び移りながら、スピーカーは呟いた。

数時間前、海辺で遭遇した真っ黒メガネ華族の戯言屋から、【納涼計画】と銘打たれた書類を、ちょっとした取引を経て、受け取ったのである。
(やりますっていった限りは、成功させなくちゃね。)
きちんと期限が付け足されたそれを、汗で汚れないように右手から左手に持ち替える。

「何か確実なものがあれば―」
そう言いながら、駄菓子屋の軒先に入り込んで一休みする。
「・・・。それにしても暑いよ。家帰る道がサウナだもん。」
はぁ、と息をはいて横を見れば、日よけ用のパラソルが2つ並んだ店先に、氷菓子専用の冷凍庫と、ラムネを冷やす水槽があった。
それらの前に記された値段が、記憶の中にあるものの6倍していたことを除けば、昔から変わらない街角の風景である。

(アイスにラムネ。なんかすごく、食べたい&飲みたいかも…きっとすごく冷たくて美味しい…)
顔を近づけてそう考えてから、ぽんと、手を打つ。
「そうだ!これにしよう!!」
外からではなく、体の内側から冷やす作戦にしたらしい。
1番の決定打は、自分が食べたかったからなのだのだが、それはまあ、実行するものの特権であろう。

やるべきことを決めた後の、スピーカーの行動は素早かった。
まずはお財布と相談して、市販のものではなく手作りのアイスクリームを作ることにする。次に料理が趣味であるパイロット、サイ=コーデルフィアの仕事場に押しかけ、「会議の準備で忙しいんだけどな、おれは!」という文句も無視して、レシピを聞き出した。

ひと言も聞き漏らすまいとしていたので、気がつくと、メモに、サイがぶつぶつとこぼした「明日の朝いちなんだ!政庁でこれからの藩国人事について話し合う、大事な―でも、めんどくさいから行きたくねぇ〜!」などという、調理とは全く関係ないことまで書き込んでしまっていた。

それから、食品リスト片手に買い物に出る。
前の戦争と、現在の大規模な動員の影響で、どの店でも品物の数が減っていた。それでも、必要な分の卵・砂糖・牛乳などが、きちんと手に入るのだから、飢えで死ぬ国民はまだいないだろうと、ショックを受けた気持ちを落ち着かせる。
「え、えっと。持ち運ぶ時の保冷用に、ドライアイスも忘れずに用意しなくちゃね。」

最後に、自宅に戻り、かなり多めに揃えた材料でさっそく料理(?)を開始。
それほど難しくない調理内容と、きっちりポイントを押さえた解説文があるおかげで、見目うるわしいバニラアイスクリームが完成した。味の方も、きっと外見と比例しているに違いない。というか、味見の結果、美味しいことが明らかになった。

「残る問題は誰に食べてもらうか、かな。」
できばえに満足しながら、考える。
こちらの思い通りに『冷たい!』とか、『涼やか〜』とか言ってくれそうな相手が狙い目だけれども、どうせなら難易度の高い人物を陥れたい気もする。
ターゲットが1人だけだと失敗した時の仕切りなおしが面倒だったりもするだろうし…と思いを巡らせる。

「悩むなぁ。こうなったら、いっそ皆いっぺんに―あ!」
急いでメモを見直す。
―明日、朝いち、政庁、大事な会議、めんどくさい―の文字が並んでいる。
「これ。この会議に、差し入れです〜vっていって持ち込んだらいいじゃない!」
(そうしたら、誰かが言ってくれるわよ。『涼しい』って!)
すごくよい思いつきだと、1人で頷きながら、完成品を食べやすい個別のトレーに盛り付け、冷凍庫に納める。

「後は、朝起きて、ドライアイスを入れるだけ。」
あふぅ、とあくびが出た。
「なれないことしたら疲れちゃった。もう寝よう…おやすみなさい。」
冷凍庫からのひやっとする空気に名残を惜しみつつ、台所を離れ、寝室へと向った。

翌日、陽がずいぶん高くまでのぼった頃。
「うわ〜!!寝過ごした〜〜〜〜〜!」
スピーカーは泣き出しそうな声を上げながら、政庁への道を走っていた。
「目覚まし4つもかけたのに〜。オーディオのアラームも、端末のアラームもセットしておいたのにぃ〜〜!」

なんとか目的地に到着し、ゼイゼイと息を切らして、大会議場の扉をノックする。
「はい?どうぞ?」
いくぶんか高い、可愛らしい声が聞こえた。
(この声は藩王様。ということは、まだ皆、中にいる!よかった〜。)
「会議お疲れ様でっす!!差し入れ持ってきました〜。」
乾いてイガイガする喉で、それでも元気よく言うと、汗でぬめる手でドアノブを回して、室内へと入った。

(あ、あれ?)
思わず、動作が止まる。
自分の声が反響している空間には、藩王スフィア=ラスタリア=フィーブルその人と、吏族のジョン=ウォーカーだけしかいなかったのだ。
「スピーカーさん、差し入れ用意してくれてたの?」
いきなりの登場に驚いたフィーブルの顔が、すまなさそうなものにかわっていく。

「話し合いが全部終わったから、みんなには、もう解散って言っちゃったんだ。」
「あー、やっぱり。こんなに遅れちゃ、間に合うはずないですよね。あははは。」
駆け足出勤には馴れているのだが、今日は暑さのせいか足元がふらつく。
1番近くのイスに足がひっかかって倒れた。
が、アイスクリームの入った箱は死守。
「だ、だいじょうぶ?がっかりさせてごめ―」
「ああ、気をつけて!せっかく用意してもらったのに、す―」

「み!水下さい!」
パタパタと走りよってくるフィーブルとジョンが、必要ない謝罪の台詞を述べないように、床につっぷしながらヒステリックに叫んだ。
(ごめんなさいは、わたくしなんです。お二人とも〜!)
フィーブル藩国に来てから何度目かの、心からの反省だった。

箱を受け取ってもらってから、起き上がったスピーカーに、会議用に用意されたミネラルウォーターが差し出される。
「こ、これ飲んで?」
おろおろした感じの少年藩王。
「慌てると気管に入るから、ゆっくり慌てないように。」
落ち着いて対処する若い吏族。

(まだここにいたって事は、会議が終わった後の確認作業とか、まとめとかやってたのかな。)
ああでもないこうでもないと討論する様子が頭に浮かんだ。
(なんか、いいな。熱くて。)
心配する二人を交互に見つつ、にへらと笑って言った。
「ちょっと、足がもつれただけなんですよ〜。平気です!それよりも、お二人ともこれ食べて下さい。わたくしが作った手作りアイスクリームです。」

溶けてないといいんですけど、とそれぞれに手渡していく。
慌てていたので、用意していたクーラーボックスではなく、紙の箱に入れてきてしまったのだが、スプーンは忘れなかったようだ。
「わぁ。ありがとう!」
「嬉しいな。あ、ちょっと待って。机の上の書類が、風で飛んだみたいで。」
さっそくひと口食べるフィーブルと、受け取る前にさっきまで座っていた場所まで戻っていくジョン。

「おいしいよ、これ!」
素直に喜んでいるのを横目で見ながら、箱の中をのぞく。
「そう言っていただけると、嬉しいです。」
(残ったのは、わたくしが食べてもいいし、通りがかった猫吏族さんや猫さんにあげてもよさそう。)
見ると、角の方でだいぶ小さくなったドライアイスがコロコロと積み重なっていた。
邪魔くさいので、溶けかけたアイスをどかして窓の外へ捨てようとする。
と、その時、昨日見たラムネが脳裏をかすめた。
(そういえば、炭酸飲料の中に入ってるのは二酸化炭素だったっけ。)
手元とさっきもらったミネラルウォーターを見る。

「もしかして、作れちゃう?」

       *       *       *

「書類に汚れはついていないな。よし。」
確認して、離れた場所の二人を振り返ったジョンの目に、アイスをほおばるフィーブルとその隣で嬉々としてペットボトルにドライアイスを詰めるスピーカーの姿がとび込んだ。
(おい。それ…)
過去に読んだたくさんの書物が、その中の知識が、1つの結論を導き出した。

『その行為は危険である』

何してるんだ、と声をかける間もなく、キャップがしっかりはめられる。
(やばいって!!)
スピーカーが手の中の物体の異常に気付いたのか、のぞきこみ、眉をひそめている。
フィーブルが、不思議そうに、傍に寄っていく。
(っ!)
どう考えても自分の速度では間にあわないのに、走り出していた。
それと同時に思いついた名前を呼ぶ。

「あさきさん!!」

それは、藩王と盟約を交わしながらも、めったに人前には姿を見せず、影ながら付き従う者の名前。

       *       *       *

(ジョンさんが走りながら何か叫んでいる。)
スピーカーがそう認識したのとほぼ同時に、ヒュン、という音がして、目の前に灰色の塊が現れた。
「へ?」
あまりのことにそれしか出てこなかった。
間抜けな音が消えるより早く、その塊は、持ち主からペットボトルを奪い取り、窓の外へと放り投げる。
目で追っていると、ほんの一瞬後、ボシュっという音がして、空中の物体が弾けとんだ。

「ば、爆発、したの?」
目をまん丸に開いて尋ねるフィーブルに、灰色の塊もとい、西国人特有の灰色の髪をしたあさきが答える。
「そうです。」

「え、え〜?ラムネは〜〜〜〜?!ぐぎゃ。」
てっきり炭酸水が出来るものと楽しみにしていたスピーカーは、素っ頓狂な声をあげた後、間髪いれずに、走りよって来たジョンにどつかれた。
「何考えてるんだ!あんたは〜!」
メガネがずれ、髪を乱したその大きな体躯からは、怒気がにじみ出ていた。

「さて、藩王様。お怪我はありませんか?」
背後で、ものすごい勢いで怒鳴っている人と怒鳴りつけられている人とを無視して、藩王とその影は会話をしている。
「あ、ないです。ありがとう。」
「いえ。それでは。」
お礼の言葉に軽く敬礼すると、あさきは現れたのと同じ速さで姿を消した。
「あさきさん・・・なんかもう忍びだね。」

「あさきさんがいなかったら、二人とも大怪我!場合によったらホント最悪の結果になってたんだ!」
ジョンは、手こそだしていないものの、殺気のこもった視線と大声で喝をいれ続けている。
「・・・だって知らなかったんですよ〜。ああしたら、ラムネになると思って。」
涙目になりかけながら、言い訳するスピーカー。

「知らなかったじゃすまないことが、たくさんある!って、ラムネになんかなる訳ないだろっ!!」
「すみません。ごめんなさい、ごめんなさい〜」
「自分に謝罪する前に、まずフィーブル様にお詫びをいれる!」
「はい!フィーブル様、本当に申し訳ありませんでした!」
「まったく、肝が冷えるとはこういうことか・・・」

しばらくして、その場の雰囲気の悪さに耐え切れなくなったフィーブルは、落ち着きを取りもどしたように見えるジョンに、ぎりぎり溶けてないところがある、アイスクリームを手渡して、自体の収拾に乗り出した。
「本当に反省しているようですし、このあたりで許してあげるというのは?これ、作ってきてくれたのも彼女ですから。」
「はあ、フィーブル様がそうおっしゃるなら―ありがとうゴザイマス。」
怒っていても、ジョンはお礼を言って律儀に食べる。

「どうですか?」
ニコニコとフィーブルが言った。
「どうって…それなりに冷たくて、美味しいですけど。」
ぴくり、とスピーカーが動いた。
「そうですか・・・それは・・・良かった。」
下を向きながら、小さい声で呟くと、なにかの紙とペンを取り出た。
「ちょっとすみません。」
しゃがみこんで手が動いたかと思うと、急に立ち上がり、ジョンに向って言った。
「これ、お願いしますね。」

顔の正面に、ずいと書類が差し出される。吏族の性で、文章には自然と目を通してしまう。
3枚つづりで、次のように書かれている。

○はじめに(1ページ目)
1:この書類を読み始めた者は、この書類を破ったり捨てたり見なかったことにしてはいけません。
もしそのような行為におよんだ場合、恐ろしい罰が行われます。御注意下さい。

2:この書類を読み始めた者は、藩国の定めた納涼計画に参加しなくてはいけません。
もし納涼計画に参加しなかった場合、恐ろしい罰が行われます。御注意下さい。

○納涼計画について(2ページ目)

1:まだ納涼計画を知らない国民の誰かを、涼しくして下さい。
特に方法は問いませんが、必ず、相手に「涼しい」などに類する発言をさせて下さい。
この時、絶対に、納涼計画について相手に話してはいけません。

2:相手に発言させたら、この書類の3ページ目に、自分の国民名とコメントを記入して下さい。
 必ず相手を涼しくさせてから、国民名とコメントは記入して下さい。
相手が「涼しい」などに類する発言をしていないのに記入したり、実際に相手を涼しくさせていないのに、「涼しい」などに類する発言だけさせて記入するなどの行為におよんだ場合、恐ろしい罰が行われます。御注意下さい。

3:相手をちゃんと涼しくして、「涼しい」などに類する発言をさせて、3ページ目に記入が済んだその時点で、その人の納涼計画ノルマ終了です。今度は「涼しい」に類する発言をした相手にノルマが移動しますので、必ずこの書類を渡して、読ませてあげて下さい。

4:ほとんどの国民が納涼計画に参加してノルマを達成したら、この書類を戯言屋まで届けて下さいませ(笑)

5:なお、あえて難しい方法で、相手に「涼しい」に類する発言をさせた場合、フィーブル藩国から素敵な豪華プレゼントが用意されます♪

○納涼計画参加者コメント(3ページ目)

 戯言屋:「スピーカーさん、ありがとう♪」
スピーカー:

3枚目に書かれたコメントは『ジョンさん、次よろしくv』だった。
顔を上げると、にへらと笑うスピーカーの顔。

わなわなと拳を震わせて怒鳴った。
「あ・ん・た・・・!反省する気なんてないんだろっ!!」
この行動で、ジョンの怒りに油を注いだスピーカーは、その後小一時間、廊下に正座で説教、加えて減給されたという。

(書いた人:スピーカー)

次回リレーSS→ジョン=ウォーカー

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
皆さん御上手ですね(汗)
次に周ってきたら気合入れて書かないとッ!
フィーブル
2007/02/05 01:25

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