フィーブル藩国 国立図書館

アクセスカウンタ

zoom RSS 静かな国

<<   作成日時 : 2007/02/06 19:58   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

 静かな国。
 それが、船からフィーブル藩国に降り立った時の第一印象である。

 この国は、砂漠と大海原、二つの大海に挟まれた辺境の国である。
 国の名となるオアシスの近くに発展した小国で、豊富な地下資源の採掘で食っている……と言うのが、耳年増に仕入れた予備知識だった。
 実際、かなりのレベルで機械化が進んでいるらしいとは聞いていたし、港からはバスが出ていたのだが、丁度一便乗り逃したので歩いて見て回る事にした。
 アスファルト張りの整備された道路に街路樹が並ぶ。さながら大都会を思わせ、日差しが少々眩しいものの、想像した程ではない。足元はこの地域の環境に適応した耐熱性、高層建造物には太陽の日差しを抑える塗料が塗られているらしかった。(無論、建築学にあまり学のない者の推論なので、信憑性はイマイチ薄いが)
 しかし残念ながら、道を行きかう人はあまり多くはなく、砂漠の砂の音と海のせせらぎが漏れ聞こえてくるかと思うばかりの、独特の静けさが、この国にはあった。
 それもそのはず、この藩国は今、中央政府から戦地認定された、立派な戦場なのである。

 幸い中央公園近くまで行けば、店を開けている所ばかりであり、長旅で幾分くたびれた身なりを正す事が出来た。
 近くの喫茶店で一服する。慌しい時に飲むお茶も良いが、やはり静かな時に飲むお茶は格別である。精神からノイズが取れて、フラットにリセットされるかんじ。
 適当な英語で一息ついた後目についたのは、『みんな落ち着いて! 僕も落ち着くから!』と描かれたポスターである。エクスクラメーションマークの勢いが、なんというか、描いた人が一番テンパってるんじゃないかなぁと推測できてしまう辺りがなんとも微笑ましい。
「これに写ってるのが、噂の藩王陛下ですか?」
「何だ、そんなにジロジロ眺めて、アンタ知らなかったのかい?」
 お店のおばちゃんが笑いながら言う。
「先の藩王様が早くに亡くなってね……とはいえ、うちの藩王様は、代々あまりお体が強くないらしいんだけどねぇ。今の藩王様は御年14歳のスフィア様。よくうちにもいらしてくれるよ」
 代々短命。何とも儚い話である。
「でも……襲名早々こんな事になって。神様ってのはなんて容赦のないお方なんだろうねぇ」
 まぁでも大概容赦ねぇよなこの手の神様って、とは思ったが、さすがに口に出すのははばかられた。
「今は部下の方と走り回っているようだけど……こんな状況じゃね」
 謎の敵性要塞艦出現の報は、にゃんにゃん共和国全土、いやわんわん帝国も含めた世界中に電撃的に走った。
 しかもよりにもよって、出たのがこの辺境の小国である。共和国では援軍を送る向きもあるようだが、どれだけ間に合うかは実際のところ敵の正体くらいは不明だった。
 絶望のど真ん中である。防衛戦力すら満足にそろえられないのではないかと、言われていた。

 喫茶店を出て、中央公園の一角に陣取った。土産物屋で二束三文で買い叩いたリュートを抱いて、一曲歌う。
 絶望と悲しみの海からそれは生まれ出でる、という、昔流行った行軍歌だった。
 聞く者も少なく、しかも自分でも思うがさして上手くも無い。だがいちおう、礼儀であり儀式である。
 歌は力になると盲目的に信じられるほど、物語を信奉しているわけではなかったが、まぁでも歌わないよかマシじゃないか、と思う程度には、多少の夢も持ち合わせている。
 ただ、一文だけ、男と女が生き残れば…とは歌わなかった。それは勝利ではない。それはあまりに悲しすぎる。親も友も失って、そうやってでも生きていけと強いるには、まだここの藩王は若すぎる。

 一曲歌い終え、飛んできた少々のおひねりに礼を言い、政庁に向かうことにした。
 諦めが悪い人間と言うのはどこにでもいるもので、お人よしと言う人種も世間で言われるほど少なくはない。
 この詩人もそういった、若干少数の部類の人間であり、つまる所、このフィーブル藩国に仕官に遠路はるばる旅してきた変わり者であった。
 自称へぽGS、と言う、なんともしまらぬ名前である。
 で、そのしまらぬ詩人が国民登録を受け、何をやっていたかといえば挨拶周りと雑用であった。
 ワタクシこの度この国に仕官させていただきましたへぽGSと申しまして、ああいやへぼじゃなくてへぽですモニタだと潰れますが、みたいなやり取りを関係各所歩き回ってやってたのである。
 さすがに挨拶しにいくだけではこのクソ忙しい時に何やってるにゃーと怒られそうなので、白ヤギさんよろしくメッセンジャーボーイもやっていた。
 この国では歩兵はサイボーグ化されるのが常と言われ、適正検査も受けておいた。まぁ世の中指が吹っ飛ぶ人も居れば、全身BALLSもどきになってしまう人もいるのであるから、あまり拒否反応は無い、と強がっておく。念のため、なるべく艦橋で倒れないボディにしてくれ、とは頼んでおいた。
 しかし、どうでもいいが、挨拶ついでに「今度お時間があるときにお茶でも」とつけるのはやめよう、と思った。決して不埒な意味ではないのであるが、色々な意味での誤解が多数発生していたのである。しかも猫は嫉妬深いらしいし。師匠の苦労の一端を体験してちょっと同情。
 まぁ、ぬっちゃけたところ大概特殊な技術も持たない新人に仕事なんて限られているのである。それならば、ちょっとお邪魔して顔を見せておくのも、それなりに優秀な対時間効果を上げる。
 コミュニケーションというのは思いのほか大事である、というのが詩人の弁であった。
 与えられた自室で、日記に筆を走らせる。国民登録の時すばやい対応を行ったのは藩王自身であり、非常に好感が持てた。出会った国民は良い人が多かった。命を懸けて守る価値は、あると思っている。良い国だ。
「まぁ、子供が泣くというのは、どうにも、アレだ。よくないよなぁ、古典的ながら」
 問題は、それを守れる実力が自分にあるかは、今もって不明のままなのだけれど。まぁ昔から目をぐるぐるにして命を懸けてきた方々のご加護があらんことを、と祈って、床に就く事とする。

 フィーブル藩国の夜は、少しばかりヒーロー的な気分が味わえる、良い夜であった。とその日の日記は結ばれている。

 (文:へぽGS)

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
● 目次 ●
● 国立図書館 ● ...続きを見る
フィーブル藩国/国立図書館
2007/02/06 21:03

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
静かな国 フィーブル藩国 国立図書館/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる