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zoom RSS バトルレポートオブEV69(物語バージョン)

<<   作成日時 : 2007/04/08 23:45   >>

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“また戦争かにゃー”
“なんだか犬がいる気がするにゃー”
“気のせいだと思います”
“とりあえず、お前らとっとと避難するにゃー”
 ―キノウツン藩国民の避難誘導を行う共和国チーム、回顧録より抜粋―

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「よくもまあ、この数を揃えたものだ」

 にゃんにゃん共和国も最北。北海島に集結したわんわん帝国軍の顔ぶれを眺めて、男は感嘆の声を上げた。
 集結した歩兵の数は資源犬士も含めて73。それに加えて帝国製I=Dトモエリバー5機の大所帯。

「一人の過ちは10人の血であがなわれる。
 帝國では、たった10人ですむのなら騎士は喜んで血を流すと誉れの言葉にしております」

 男の隣で、帝国軍のその他と同じく軍服に身を包んだ男が言う。
 大神 重信。人狼領地の藩王であり、わんわん帝国参謀長である。
 一人黄色い革ジャンに身を包む男、海法 紀光は不敵に笑うと口を開いた。

「一人の過ちは10人の血であがなわれる。
 共和国では、軽率を戒める言葉だったりするよ」

 帝国にはない服装をした海法はそのまま、犬の軍に向き直って手を上げた。
 振り下ろす。
 号令。

「我々の役割は青森の捜索と確保。敵は猫側部隊に誘導、戦闘開始と同時に戦域を離脱する」

 了解、と規律のとれた敬礼を返す帝国の面々に頷き、海法は長い髪を揺らして言った。

「では行こうか。この作戦に犬も猫もない、だから誰の血も流れないと信じよう」

 砂漠という地形の利を生かし、砂に紛れ各個に散っていく帝国軍。
 大神は自らも走りながら、今は帝国軍の指揮を執っている海法の方に顔を向け、言う。

「それ、格好よすぎです」
「ははは。まあ、たまにはいいじゃないか」

 軽口を飛ばす一方で、眼鏡の奥では真摯な眼差しを大神に向ける海法。遅れて走り出す。
 指揮官の目線から見て、この大神という男は有能だな、と思う。
 根源種族の侵攻でそれどころではないとはいえ、敵地である共和国にこれほどの軍勢を送り込むとは。
 あるいは共和国の参謀団よりも優秀か、と考えたところで足を止める。

「あー、テステス。無線良好ー。これより偵察を開始します。どうぞー」
「こちら海法。よろしく頼む」
「了解、偵察行動開始します」

 星見司処は青森がキノウツンに現れると予想していた。それを追って敵が現れるとも。

「時に」自らも星見司である海法は、同じく足を止めていた大神に言う。「君の見立てではいくらいると思う?」

「そうですね」
 
 大神はふと思案するような顔になると、一拍置いて飄々と言った。「1000とかいたりして」
 
 ふむ、たしか共和国の参謀は500とか言ってたな、と海法は考える。
 なかなかに興味深い。どちらの見立てが正しいのかはわからんが。
 通信機が鳴る。

「偵察ってレベルじゃねーぞ! 多ッ…多ッ!?」
「敵を見つけた。チルが100…200……わからん、1000は居るかもしれん」
「こちら海法。アラダがいる可能性がある。注意してくれ」
「アラダ発見。一人のようです」

 うっかり即死してもらっては寝覚めが悪い。
 アラダ発見の報告の早さに、注意してくれと言ったんだがと顔をしかめる海法。

「敵はここ、キノウツンに現れた。数も君が言った通りのようだ」
「ただの予測ですよ」

 いたずらっぽく笑う大神。

「こちら大神。ターゲット、青森の捜索も頼む」
「了解」

 「なんだアラダは一人か。なめられたものだ」と強がっておいて、後ろ手で魔除けの印を結ぶ海法。
 なるほど偵察の手際の良さも、あるいはこの大神という男の手腕によるものかと思う。

「こちら偵察、ターゲットらしき人影を発見。どうぞ」
「言 成、青森と接触成功。歩兵部隊が保護しました」
「こちら司令部、大神了解。……では、俺も歩兵してきます」

 大神は敬礼すると、砂に紛れて走り去って行った。
 いいよいいよ、と報告を受け、いってらっしゃーいと大神に手を振る余裕を見せた海法は、この場にいない同胞達のことを思う。
 あの軍勢と戦うのは自分達ではない。このままではまだ、役者が足りない。

「さぁて、ここで城門開いて、一気に挟撃、と、いきたいところだが……」 

「アシタ スナオはどうしてるかな?」


/*/

 一方。
 統制のとれた行動を見せる帝国軍の裏で、うーんと頭を悩ませている男がいた。
 共和国軍の指揮官、アシタ スナオである。

「帝国が動いたらしい」

 観測員からの報告に、ちょっと泣きそうな顔になるアシタ スナオ。
 勝手知ったる自国、キノウツンで犬の国に先を越されるとは思いもしなかった。
 
「犬の国は速いのである。統率がとれているのであるな」

 キノウツン藩国民でにゃんにゃん参謀長のはるが、アシタ スナオの隣に並んで言った。
 宰相が強力なリーダーシップをとる帝国と違い、各藩王の同意の元に共和制を敷く猫の国。
 良くも悪くも合議制というものは時間がかかる。僅かなタイムロスも許されない戦闘においても例外はなかった。

「間際でも参加を申し出てくれた者がいるというのは、ありがたいことだろう」

 VZAはすごい速度で人員のリスト化を進めながら、それでも軽く笑ってみせた。
 この人物もキノウツンの人間である。今回は編成担当としても活動しているのだった。

「けどなあ、ここはにゃんにゃんなんだぞ。わんわんにばかり目立たせるのは……」
「共に和す故、共和制なんだそうだ」

 リスト化を進める人間が一番苦労しているのには違いない。
 その人間に言われては返す言葉がないな、とアシタ スナオは思った。
 うーん、と唸る。

「うちはツン様の専政でいいけどな」
「そりゃ当たり前だろう」

 ばか、と言う代わりに息を一つ吐いて、VZAはアシタ スナオにリスト化された書類を差し出す。

「勝つぞ。ここまでやって任務失敗では洒落にならん」
「にゃんにゃん参謀団はここキノウツンに青森恭兵と敵の出現を保証するのである」
「あちらの指揮は海法さんだそうだ。今から行って間に合うかね」

 海法 紀光。アイドレス世界きっての戦上手と名高い海法よけ藩国の藩王である。

「間に合うか、ではなく間に合わせるのである」
「違いない」

 アシタ スナオは身を翻し、自発的に集合している共和国の有志たちに手を上げる。
 振り下ろす。
 号令。

「犬は犬らしく役割を果たして青森を守るだろう。予定通り、こちらは根源種族殲滅に動く!」

 細かいことにこだわらない猫らしく、めいめいにばらばらな反応を返すのが共和国軍である。
 資源猫士を含めた歩兵26名、I=D9機からなる共和国軍は速やかに移動を開始。
 高機動のトモエリバー、うささんやバーミーズに続くようにアメショーが続く。最後に歩兵。

 “The thing which removes a mistake.”
 過ちは代償をもってあがなわれる。言い伝えでは、一人の過ちは10人の血であがなわれるという。
 果たしてそうか。
 
「ボクは過ちをあがなうものは、命じゃなくて人の汗だと思うんだ」

 アシタ スナオはアメショーの操縦桿を握りながら呟く。
 そうであって欲しい、という願いでもあった。

 一方、その同じアメショーのコックピットの中で。
 キノウツン藩国民のKATZEとせいは「うちの摂政は夢でも見てるのかな、あっこんなところにバールのようなものが」などと意味深な発言をしていた。


/*/

「部隊の配置完了しました」

 大神からの通信を受けて、海法はふむと呟いた。
 戦闘になれば歩兵主体の帝国軍は保険だ。数は多いが、それだけの話である。

「各員そのままの位置で待機。合図あるまで動かないよーに」
「了解。これならどこに撃っても外しようがありませんね」

 1000体にも及ぶチルの行進は見ていて笑えるくらいだった。どう考えても悪い冗談にしか見えない。 
 偵察によりアラダの位置は把握していたが、相手に気付かれることだけは避けたい。
 単機で凄まじい攻撃力を持つアラダに先制されては、反撃前に必要な戦力を削がれる。

 海法、とにかく危険なフラグを避けまくることに快感を感じる男である。

「撃ち方用意」

 我慢の限界点を見極める。
 帝国単独の戦力では戦闘は無理だ。共和国を待っても奇襲が成立しなければ意味がない。
 
 目を瞑り、心の中で数字を数える。素数ではなくカウントダウン。
 犬は居る。猫は来る。アシタ スナオは間に合わせてくる。
 目を開く。

「撃てー!」

 指揮官やるならやっぱこの台詞だよなぁと思いながら、海法は腕をぶんぶん前後に振った。

「ん、了解!攻撃開始します」
「青森さんさえ保護できりゃー、後はこっちのもんだぜ!」
 
 着弾。揺らぐチルの巨体。

「命中弾しか出ないなこりゃあ…そもそも多いんだよ遠慮を知れ!」
「こんな状況でも皆熱いねぇ…たまんないな、俺この国大好き。さて、行きますよっと!」

 一体、また一体とチルが揺らぐ。出来の悪いドミノ倒しに似た光景。

 一斉に帝国軍の部隊の方へと向き直るチルの群れの背後で、小さなシルエットが空中に踊る。
 1000を超える敵意を、その身に受けて笑う海法。
 最初から陽動のための攻撃だった。

「斉射!消えろやーーーーーーーーーーーーー!!」
 かわいらしい外見とは裏腹に空中から凶悪な弾丸をチルに浴びせかけるうささん。

「戦闘薬注入…これがドラッグの力かっ、打て打て撃て!」
 驚異的な機動性能で敵の隊列を崩しにかかるバーミーズ。

「よっしゃー!青森さん、まっててーっ!」
 帝国軍でもお馴染みの突撃力、ジェントルにゃんにゃん所有のトモエリバー。

「着弾観測は報告を密に!」
 寡兵よく仕事をこなす歩兵部隊。

「かなり手間取ってしまいましたが、何とかなったか・・・ガガッガー?」
 部隊をまとめ上げるのは稀代の凡機、アメショー。
 海法の読み通り、アシタ スナオは間に合った。共和国は間に合わせてきた。

「よし、撃って撃って撃ちまくれガガッガー!」

 突然の奇襲。狙いすました陽動攻撃。敵の注意を惹き付けた上で、アタッカーによる背後からの浸透突破。
 犬と猫の枠を超えた見事な連携の前に、敵は体勢を整えることすら許されない。
 戦況はもはや、一方的な様相を呈し始めた。


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「……ふぅ。ちょうどいい時に間に合わせてくれる」

 早々に戦域から一時離脱していた海法以下帝国軍は、戦闘終了と同時に共和国軍に合流した。
 相手のアラダに名も名乗らせないほど、一方的な勝利だった。
 味方の誰として血が流れなかったのである。共和国も帝国も区別なく、喜びが爆発した。

「……まぁ情報収集もできればよかったんだが、さすがにそれを望むには時間がなかった。罠は次にでもしかけよう」

 海法はそう言うと、アシタ スナオへ手を差し出した。
 同時になんだか違和感を感じ、顔をしかめる。なんか、ちっこいのが通り過ぎた気がしたのだった。

「・・・なんだ、これ」
 
 海法に手を差し出しつつ、空いた手で宙を掴むアシタ スナオ。
 まずは握手をし。続いて、握った手を開く。
 蚊みたいなのが手のひらに乗っていた。

 蚊のような蟲を物珍しそうに眺めるわんわん、にゃんにゃん両陣営。
 知識を集める。人数が多い帝国軍は特に、情報を多く出し合った。
 
 分析の結果。
 別世界の蟲、ちょっとした式神でメッセージを伝えるものだと判明。
 だが、肝心のメッセージが読み取れない。

「なるほど。問題は何を誰に伝えるかだなぁ」

 うーん困ったぞ、と皆が顔を見合わせる中、一人の男が前に進み出る。
 白にして秩序、都築つらね。法の守護者とも呼ばれる人物である。
 彼の力により、さらに詳細な情報が取り出される。

 蟲は魔力を辿って移動していること。
 キノウ=ツン藩王の頭上及びFEGにあるゲートを経由していること。
 人を探して、どこかへとメッセージを運んでいること。
 メッセージは、ドイツ語で「お前を必ず殺してやる」という内容であることが判明した。

「ぐああ、ここまでか・・・」

 それ以上の情報は得られず、蟲は死んでしまう。
 指揮官達はメッセージの内容に頭を痛め、特にアシタ スナオは、嫌な匂いがとれないと数日手を洗うこととなった。


/*/

 さて。
 指揮官クラスがうんうん考え込んでいる間に、人垣に取り囲まれてる男がいた。
 青森恭兵である。

「え、ちょっと、青森さん、どうして一人でいっちゃいますか? まってまって少し待って」
「まて、ちょっとまて、まぁ落ち着け、そのままお前さんが行くと泣くやつが大勢いる。泣くぞ、女が」

 青森恭兵は助けてもらった礼もそこそこに、キノウツンの地を去ろうとしていたのだった。
 大人特有のくたびれた仕草で愛用の長銃を肩にかけ直す。
 
「すまない。依頼人の兄が……ヒロシマにいるんだ。今すぐ、俺は行かないと」

 どこか焦燥感すら漂う言い回しで人垣を突破しようとする青森。
 そんな彼の前へ、強固に立ちはだかった者達がいる。

 彼のファンを自称し、彼の活躍と無事を願ってやまない守護妖精達と、そんな彼(彼女)らに感化された者達だった。
 人垣にほら、と背中を押されて、青森のファンのひとりが進み出る。一歩、よろけて二歩、三歩前へ。

「(胸がいっぱいでぐるぐるしながら)あのっ…大将に元気な姿をみせてあげてくださいっ…」

 どうしても止めるというのなら強行突破でもと考えていた青森は、毒気を抜かれて「は?」と言った。

「待ってる人が沢山いるの。ここにこれなかった人も沢山」
「あなたをひとりで行かせるわけにはいかない。あなたのために胸を痛める人がたくさんいるから」
「旅は道連れ、世は情け。確実に届けなければならないなら是非一緒に行きましょう」

 なんだか変な方向に話が進んでるなぁと思う青森。

「まったっ!せっかく一緒に戦ったんです。なにかしたいことあるなら手伝いますよ」
「ルートを教えてください。広島には、僕たちの大切な人がいるんです」
「ちなみに、今ここにいる人間は冗談抜きで君一人のために集まったわけなんだけど……それでも1人で行くのかい?」

 その場に居ない者の言葉を伝える者もいた。ほら、と青森に通信機を手渡す。
 訝しがりつつも青森が通信機に耳をつけると、堰を切ったように大量の音声が頭に流れ込んでくる。
 重なりすぎてもはや言葉になっていない。耳がきーんとした。

 なんだこれは、新手の精神攻撃か。一旦耳を離して狐につままれたような表情を浮かべる青森。

「せっかく出会ったんだもん、最後まで付き合わせるのが義理ってもんでしょ?(ニカっと笑いながら)」
「数は力、と何方かが仰られていましたが・・・折角これだけの人が貴方のために集まっている、共に」
「そうそう 私たち貴方を助けるためにねこの国まできたんですよ!」 

 ファンは、それゆえにファンであると称される人懐っこさと真面目さと必死さで青森に訴えかける。
 ひとえにキャラ愛と評されるそれは、比類なき天下無双の力を彼らに与えるのだった。

「広島!?広島!?金城の姐御に会えるならどこへでも!!」
「広島?……牡蠣、お好み焼き……じゅる」
「お好み焼きだぜ!師匠!(師匠=青森、勝手に)」

 波のように押し寄せたかと思うとめいめいに勝手な話を始めるファン達を前にして、青森は頭をかいた。
 若さの足りてない笑みを浮かべる。
 
「んじゃ、厄介になりますか」

 青森の言葉に、再びわっと人垣が沸いた。
 青森を中心とした輪から少し離れたところで、はる、大神、海法とアシタ スナオは頷き合う。

「ファンの力は偉大ですね」
「熱い心の叫びだガガッガー!」
「いやアシタさん、温度間違ってるそれ、たぶん」
「うちの摂政は単純なのである」


 人命の前には、犬も猫もない。
 人の願いと行動はここに、誰の血も流さずして失われるはずの命を救うことを可能としたのだった。




   バトルレポートオブEV69 物語編 完
          (文責:久織えにる)

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