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<<   作成日時 : 2007/05/17 22:05   >>

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 つけっ放しのテレビが、番組編成のつなぎとしてCMを流している。

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 その日、久織えにるは政庁政務室でぶっ倒れていた。
 思えば街角喫茶店の一件以来、こき使われる身になっている。

 生来の風来人であるえにるは、これまで定職に就いたことがない。旅人とは要するに体のいい呼び方で、現代のそれはただの社会不適合者一歩手前状態である。
 元より学のあるような人物ではなく、性格もアバウトな方だった。

 それが何を間違ったのか、今やフィーブルの華族として国内文書の発行と外交文書の発行を行う身分についている。

 気が付けば、という言葉はこの際どうでもよく――本当にどうでもよく、あまつさえ藩王代行業務をこなしてもいた。
 恐ろしい話である。

 少年王フィーブルに半ば同情するような形で入国してからこっち、大中小事様々な出来事があったがその中でも最も恐ろしい話と言っていい。

「これからしばらくの間、国の運営をお願いしますね♪」

 そう言ったのはフィーブル藩国の旧臣である第一華族戯言屋で、フィーブル藩国の摂政で、藩王代行だった。
 ちなみに共和国中央政府に久織えにるの第二華族申請が出されたのはその数日前であるから、これは真っ当な組織であれば崩壊を意味するような人事である。
 荒唐無稽な話だった。

 久織えにる、そもそも政治には向いていない人間である。
 ついでに言えば、この人物は人を使うのにも全くもって適正を示さない。むしろ指揮を執らせてはいけない分類に位置する人物であろう。
 
 藩王代行に任命されてからの間、大きな戦争イベントが起きなかったのがフィーブル藩国にとって不幸中の幸いと言っていい。

 久織えにる。
 意味もなく自信家で、楽天家で、逆境に立たされれば立たされるほど目を輝かせるタイプである。
 戦争指揮などやらせたら笑いながら指揮を執るかもしれない。テンションが上がれば目的のためには手段を選ばない性格となってしまうので、くれぐれも指揮官には任命しないよう注意が必要である。
 
 注意力にD判定が出るのに判断力にA判定が出ちゃう恐ろしい人物であった。
 さらに言えば、逆境は好きだが寸前に弱い。勝負弱い人物である。

 生来の思い込みの強さから一時期世界の謎を追っていたりもしたが、論理的思考と対極にあるような人物のため挫折したりもしている。勘だけではどうにもならないことの方が世の中には多いのだった。

 とまあ、このようにこの人物を評してきたが、平和そうにすぅすぅと寝息を立てている姿を眺めているとただのうっかりさんに見えてくるから不思議である。
 西国人の姿に情報補完されている影響で銀色が強くなっているが、赤みが残った猫毛の髪。
 瞳の色は鋼のような灰色であり、青くもなければ赤くもなく、紫でも黄色でもなかった。


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 つけっ放しのテレビから流れるCMが終わり、新番組の開始が告げられる。
 
 “無名響詩―nameless sounds―”

 とても当て字くさいタイトルロゴと共に始まるロボットアニメーション。
 よせばいいのに原作担当した某国華族QEは言う。

「バトルレポートEV69を書いていて、今度は自分でロボットアニメでも書くかなぁーとか思いましたね!」

 どうでもいいエピソードである。
 軽く無視して、タイトルどう読むんですか? という制作サイドからの質問に、いまや書類の山の横で寝息を立てている愉快な人物はこう答えた。

「むめいきょうし……」

 その声がとても小さかったので、制作サイドはもう一度訊ねなおす。
 原作者は自分でも語呂が悪いと気が付いたのか、誤魔化すように言った。
 
「ネームレスサウンズです!」

 こうしてロボットアニメにしてはひどく語呂が悪いタイトルを付けられたアニメは、第一回の放送を迎えることとなる。
 無謀にも、土曜のゴールデン枠だった。

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