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zoom RSS 灰色の空・生まれる希望

<<   作成日時 : 2007/05/20 22:43   >>

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 それはまばゆいほどの閃光だった。FVBの上空をまばゆい光が覆い、灰が空を埋め尽くす。

 それはある始まり。そして・・・。

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 FVBから帰還した刻生・F・悠也は浮かない顔をして、首都を貫く大路を歩いていた。見上げる空は死の灰に覆われ、昼間だというのに薄暗い。

 帰国途中、TVでは空を覆いつくす灰の影響で食物生産に大ダメージが予想されることを喧伝し、共和国全体に暗い影を落としていた。ただでさえ、食物事情には余裕が無い西国人であるフィーブル藩国への影響は甚大であった。

 そして、人々の不安は悠也にとって、避けたい方へと向かいつつあった。すなわち、FVB、並びにわんわん帝國への憎悪の増大である。

 こうして歩いているだけでも、突き刺さる視線が痛い。NWの僻地と言えるフィーブル藩国にわんわん帝國からの亡命者が来ることなど、滅多にある事でない。ゆえにスケープゴートとしてはうってつけとも言える。

 元々、帝國民である悠也を受け入れたことからも判るように、本来フィーブル藩国は来る者は拒まず、去る者は追わずという、風通しの良い国であった。しかし、それは生活が成り立っていてこそである。心の余裕が失われた今、藩国民は常ならざる状態にあった。

 それが行き着く先は何か。フィーブル藩国のみならず、にゃんにゃん共和国全体に帝國への憎悪が噴出し、帝國への侵攻に繋がることも充分に考えられた。
 
 爆心地である帝國は共和国よりも被害が大きいことは、容易に推察できる。それは民衆の動乱が起りやすいことにも繋がる。

 そもそも帝國は代々、名君を輩出することで政体を保ってきた。それは、無能なる者には死を与えることで維持されている。悠也は根源種族との初戦闘で、当時の自分の主君たくまが責を問われ、拘束されることで嫌と言うほどにそれが身に沁みている。

 民衆に拠るものか、宰相シロに拠るものかは判らないが、現藩王諸侯がその地位を追われる可能性は少なくない。そこに、共和国からの侵攻が重なればどうなるか。タマのような輩が全く居ないとは考えられない。

 根源種族との騒乱による疲弊、内乱、侵攻。このすべてを受けきる体力は帝國には無いだろう。結果、帝國は歴史から姿を消すことになるだろう。

  悠也は自分の思考に重いため息をつき、家路を辿る。

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 それから幾日か後。フィーブル藩国会議室はどんよりとした空気が漂っていた。

 先の偵察機迎撃作戦によって、敵は巨大レーザー砲を持ち出し、降伏勧告をニューワールドの民に行なった。降伏を促す巨大な立体映像は多くの藩国から視認でき、皆を混乱の渦へと巻き込もうとしていた。

 「最悪のタイミングで仕掛けて来ましたね」

 摂政の戯言屋の言葉に居並ぶ者は同意を示すが、言葉を発する者は居ない。皆、困惑しているのだ。

 何を言うにせよ、それが事態の打開に繋がるものであるならよいが、誰にもその妙案は無かった。

 「不作見込みによる社会情勢の不安定化だけならば、国庫の備蓄を放出すればなんとかなります。しかし・・・」

 戯言屋が振り返り政庁の窓より見上げる厚い死の灰による雲の先、そこにいる巨大な力。あれをどうするのか。共和国では連日TV会議による藩王会議が開かれてはいるが、妙手を得るには程遠い状態であった。

 「情け無い。まだまだ若いゆえか」

 溜め息に溺れそうな室内を、大猫がゆったりと進み行く。かの大猫、名はブータニアス・ヌマ・ブフリコラと言う。猫岳の王にして、かの悲しみの聖戦を戦い抜いた猛将は、猫とロボ大好きのフィーブル藩国の招聘に応じ、滞在していた。

 そのブータは長き時を生きた者だけが持つ、深みのある口調でフィーブルの上層部心へと語り掛け始める。

 「何も出来ないと嘆くのは簡単だ。だが、それでどうなる? 民を護ることをすべきことと決めたのなら、何がなんでも護るのがお前達のすべきことであろう。」

 光が生まれようとしていた。

 「かつて一人の女詐欺師がおった。どんな境遇におっても一生嘘をつき続けた女であった。我らはその嘘を真実にする為に戦った。始まりは嘘であったが、それは真実となった」

 それは絶望から生まれ出でるもの。

 「そして、われらの仲間はただの不良や、ただのペテン師であった。何も特別な処どない、どこにでもおるな」

 それは無より生じるどこにでもある贈り物

 「例え今は嘘であっても、それがこれから先、ずっと嘘であることは必ずしもあるまい」

 世界のどこにあろうとも、かならずさしのばされるただの幻想。

 「希望を与えよ。例えそれがどんなにささやかであっても、それを真実とするのがぬしらの勤めであろう?」

 それが今、生まれようとしていた。

 「会見を、設置してください」

 少年王が口を開く。

 「各報道機関に通達、放送の用意を。サイハッカーアイドレス着用者は、即時行動開始」

 戯言屋の指示に動き出す。

 それを見届けると、老猫は眩しいものでも見るかのように小さく笑い、来た時と同じようにゆっくりと部屋を出て行った。

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 フィーブル藩国の沖合いに浮かぶ人工島、フィーブルアイランド。

 その地下深くに鉄の巨身が聳えていた。

 その足元で作業をする3人の姿がある。

 「藩王が民衆に向け、会見をするらしい」
 
 サイハッカーであるへぽGSはメールを受け取り、近くのモニターに新しくウィンドウを開く。そこには、今まさに口を開こうとする少年王フィーブルの姿があった。

 「大したもんだね、この歳で」

 「そりゃ、うちの藩王様は優秀ですもの」

 感心する悠也に、嬉しそうに応える久織えにる。 3人は手を休め、モニターに見入る。

 その時であった。もう一つのウィンドウが黄金色に輝きだした。それはまだ音声による受け答えのできない撃雷号と、打ち込みで会話する為のもの。

OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.

 黄金色の文字が画面上を覆い尽くしていく。3人は困惑を隠せない。撃雷号は一切のアクセスを受け付けず、黄金文字の乱舞は続く。


OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.OVERS.

 撃雷号の瞳が光った。そして、ウィンドウから光は急に消える。残ったのは一つの文章。

 『私の早期完成を要請します。私の名前は撃雷号。全ての世界に希望をもたらすために生まれるもの』 

                   to be continued 「イベント83 降伏勧告」

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