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zoom RSS 幸運をよぶオーロラのおはなし

<<   作成日時 : 2008/01/19 06:34   >>

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 それはもう記憶も曖昧になる様な昔。
 今でも泣き虫なフィーブルはもっと泣き虫でした。

 父の、母の、暖かな温もりがもうなくなってしまったことを痛感するしかなくて、寂しくて、怖くて、置いていかれてしまった様な気がして、事在る毎に泣いていたのでした。
 彼にだけは甘いパーカーでさえも、執務が忙しくて、一緒に居る事は多くありません。皆自分より他の事の方が大事なんだとそう思っていました。

 だから、この日もずっと泣いていました。
 一面の銀景色が、闇を照らす様な明るい夜だったのに、その光すらもう彼には届いていません。
 全ての事が真っ暗なようで、何も見えていませんでした。
 傍らに寄り添う者が居た事さえも。
 それは余りの落ち込みように居ても立っても居られなくて、遂に仕事を放り出して来たラウド=スピーカーでした。
 本人は背が高くて怖そうな自分の外見を気にしていて、実際環境代官としての彼女しか知らない周囲の人々からは近寄りがたい出来る人と思われていたけど、心は人一倍優しい、そんな人。

 彼女はそこに来たのはいいけど、何を言えば良いかも分からなくて、ただそこに居るだけでしたが、空を見上げて…幸運を呼ぶと言われるオーロラが夜空に輝いているのを見ると、決心して、この話をしたのでした。




『オーロラの女神様のおはなし』

 昔々あるところに小さな小さな国がありました。
 人々はあまり裕福とは言えず、辛い事も沢山あるけど、嬉しい事もそれ以上にいっぱいあって、皆が笑顔の国でした。

 それなのに、今は皆悲しい顔をしていました。
 とてもとても怖い病気が広がって、沢山の人が苦しんでいたのです。

 その国の王様は、その国の一大事を何とかしようと毎日東へ西へ、南へ北へ、ありとあらゆるところへお医者さんを探しに行きました。

 でも、一向に病気を治す方法は見つからなかったのです。


 そんなある日、どうすればいいのかと途方に暮れていた王様は、困った時はいつもそうするように、お気に入りの場所で考え事をしようと、森の中にある小高い丘に登りました。

 すると、どうでしょう。そこには見たこともない様な美しい女性が居たのです。
 でも、良く見るとその女性は夜空を見上げて、とても悲しそうな、どうしたらいいか困っているような顔をしているのでした。

 王様は少し悩んだ後、困っている人を見つけたらいつもそうするように、その女性に声をかけました。
 何か悲しい事でもあったのですか? とても辛そうなお顔をなさっています。

 声をかけられた女性は凄くびっくりしていましたが、ちょっとだけ微笑んで、じゃあきっとわたしは貴方と同じような顔をしていたんですね。と言いました。

 女性はまた空を見上げていいます。
 空から落ちてしまって帰れなくなってしまったのです。

 王様はその話にびっくりしましたが、でもとても嘘だとは思えませんでした。逆にこの美しい女性は星の化身か何かに違いないと思ったくらいです。
 だから、約束しました。わたしに何ができるかはわかりませんが、出来る限りのお手伝いをしましょう。

 女性は言います。
 ありがとう。では、その時は必ず御礼をする事を約束しましょう。


 その日以来、王様はその女性と御話するためにお気に入りの丘に何度も向かいました。
 見たことの無い空の神々の世界の話を聞いたり、相談ごとをしたりしました。王様が相談に乗る事もありました。


 でも、それも長くは続かなかったのです。
 王様も病気にかかってしまい起きる事もできなくなってしまったのです。
 人々はもう終わりだ。皆病気で死んでしまうんだ。と、絶望に暮れました。

 そんな時あの女性が王様の前に現れ、言いました。
 わたしがその病気を治して見せましょう。

 誰もその女性の事を知らなかったので、嘘に違いないと思いましたが、王様だけはそれを疑いもしませんでした。
 王様の許しが出ると、女性は誰も入ってはなりませんと言って、何日も部屋に篭って薬を作り始めました。
 何時になっても薬ができないので、人々はますます持って嘘に違いないと思い始めましたが、王様は決して疑いませんでした。

 そして、誰の目にも、王様の限界が近いと分かる頃、やっと薬が完成したのでした。
 その薬を使うと、信じられない事に、見る見るうちに王様は元気になり、何日か後には元通りになってしまったのです。

 王様はその薬を沢山作ると国中に配りました。すると、あれほど頭を悩ませていた事が嘘だった様に国中に広まっていた病気はあっと言う間に治ってしまいました。
 人々は奇跡だと大喜びし、その女性を御妃に迎えるべきだとこぞってもてはやしました。

 それからというもの、国には良い事ばかりが起きて、二人幸せに暮らす事が出来ました。
 でも、それがずっとは続かない事を二人は分かっていました。
 秋が終わって、冬になりました。

 二人が出会ったあの丘で女性があの時の様に空を見上げて言います。
 お別れです。わたしは行かなくてはなりません。

 王様は言いました。
 どうしても行かなくてはならないのですか?
 けっきょくわたしは貴方に何もする事ができなかった。

 女性は黙って空を見つめるだけでした。
 その頬を一筋の涙が流れ落ちます。
 いえ、貴方のおかげで帰れる様になったのです。これでもわたしはまだ御礼がしたりないくらいです。ですから、わたしはあのオーロラの光と一緒に幸運を届けます。
 でも、もしそれで納得がいかないのでしたら、あのオーロラを見て、少しでもわたしの事を思い出してください。それだけでわたしは幸せです。
 さようなら。

 王様がさようならを言う暇も無く、女性は光になって空へと帰って行きました。


 それ以来この国では、オーロラを見ると良い事があると言われる様になったそうです。


 おしまい。




 スピーカーは続けて言いました。
 その王様はそれ以来諦める事を辞めたそうです。
 希望は間違いなく、そこにあると。

 別れは悲しいものですが、フィーブル様が悲しんでいては、お父様やお母様はもっと悲しくなります。だから、顔を上げてください。夜空がとても綺麗ですよ。

 何時の間にか、傍に来ていたパーカーも言います。
 うむ、違いない。
 …ところで、土産があるんだが、どうだい?
 スピーカー、何か暖かいものを御願いできるかな?

 フィーブルは久しぶりに笑いました。
 明日からは、少しだけ泣き虫が直りそうでした。


文:フィーブル

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