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zoom RSS それゆけ! 北海島アイドレス解放戦線! 第一回

<<   作成日時 : 2008/01/31 08:27   >>

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 アイドレス世界 13108002

 ひとりの東国人がフィーブルへ入国しようとしていた

 傭兵として──


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 フィーブル港に降り立った黒髪の東国人は、少年のように見えた。
 細身で小柄でさらに背が低いせいであったが、その腰には立派な刀を差している。
 暑さに負けそうになりながら、彼は荷物から地図を取り出した。

「政庁は……ここが港地区だから、北に2kmくらいか……」
「失礼。そこの貴方、ひょっとしてクーガさんかしら?」

 クーガは振り向いた。そこには、怪訝そうにこちらを見るスーツ姿の猫耳女性。
 とても猫耳が気になったが、なんとかクーガは目を合わせる。

「自分がクーガですけど。なにか?」
「私はフィーブル藩国出入国管理局の方から来た者です。傭兵志願の方ですね?」
 うん? きょとんとするクーガ。白兵戦闘の訓練教官というのは傭兵になるのだろうか。

「こちらの書類に入国手続きの必要事項をお書き下さい。お早く」
 怜悧な眼差しに押されるように、ボードに挟まれた書類とペンを受け取るクーガ。
 まあ、いいか。政庁まで行かなくて済んだと思いつつ、さらさらさら。書き終わる。女の肩が震えた。

「……くっくっくっく……あーはっはっはっはっはー!!」
 書類を手にして、女は高笑い。クーガは目を白黒させる。

「残念だったわね! 私は出入国管理局の人間じゃないわ! あんな少し前までむちゃくちゃ暇で楽な部署だったのにターン9聯合のせいで地獄に変わった職場になんて誰が勤めるものですか!」

 ちなみにフィーブル藩国のターン9における聯合数は29国である。

「え、えーと。ではその……貴女は一体どちら様で?」
 なんだか変な人に関わってしまった。共和国ではこれが普通なんだろうか。

「私は!」

 女の手が霞んだ。
 何かが飛んできて、一瞬で反応して受け止めるクーガ。
 白くて四角い、それは名刺だった。女の名前と住所と、聞いたことのない組織名が書かれている。

 ニヤリと笑う女。
 海風に、灰色の髪が揺れた。

「私の名は! キラリ・キラリコ! キラリコと呼んでね、響きがいいから。そして貴方! この傭兵契約書にサインしたからには、今日から我が北海島アイドレス解放戦線に傭兵として参加して貰うわ!」

 しばしの間。

「えええええええっ!!」
「クーガ君、利用規約とか読まないタイプでしょ。どうでもいいけど」
「と、というか自分は聯合国のフィーブル藩国からの要請で白兵戦の訓練教官として是非にと呼ばれたのですがっ!?」

「ああ。あれ嘘」
「がーんっ!?」
「いやー、適当になんかそれっぽい書類書いて送ったら本当に来るって言うからさー。なんでもやってみるものよねえ。
うんうん。政庁勤めで初めて良かったと思ったわ、ホント」

 なんだかよく分からないが騙されたと理解して、クーガは酷く驚いた。
 けらけらと笑うキラリコ。港を歩く通行人達が怪訝そうに通り過ぎていく。

「な、なんのためにこんなことを!? というか北海島アイドレス解放戦線って何なんですか!?」

 その問いに、キラリコは笑いを止めた。
 クーガを真っ直ぐに見つめる、炎のような眼差しは本気の証。

「私達は、騙されている」
 キラリコは重々しく言った。

「騙されている?」
「そう。今こうしている瞬間も、奴等は世界を、国民達を欺いている。誰かが何とかしなければいけないのよ。革命が必要なの。なんとしても真実を暴かなければいけないわ……!」

 その静かな言葉に、冷静になるクーガ。
 報道機関か何かだろうかと考える。

「……真実、というと?」

「この世界はね。実は虚構の世界なの! 造られた世界なのよ!」
 キラリコの言葉は、クーガの理解を超えていた。

「そして! この虚構の世界に君臨する悪の存在、それが奴等! なんかプレイヤーとかPCとか第七世界人とかゲーマーとか暇人とかニートとかいろいろよくわかんない通称で呼ばれる奴等によって! この世界は支配されているのよ! そんな恐るべき奴等に立ち向かう正義の組織! それが!」

「それが、北海島アイドレス解放戦線なのよ!!」
 宣戦布告するように、キラリコは天に拳を掲げた。


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<それゆけ! 北海島アイドレス解放戦線! 第一回>


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 ……どうしよう。なんだか本格的に変な人だ。
 クーガは反応に困って絶句するしかない。さすがにこういう時の修行はしたことがなかった。

 キラリコは、そんな彼を指差して怒鳴りつける。

「ああー!? なにその可哀想な目は! 本当に本当なのよ! フィーブル藩王と摂政が会話しているところを偶然耳にしたんだから! まあ、あまりに衝撃的だったから親類知人友人その他もろもろに話したのに誰も信じなかったけど、あなた契約書にサインしたんだから信じなさいよー!」

「いやまあ。その、ええと……」
 なんというか。ここまでリアクションに困ることがあるだろうかという具合であった。
 しばらく考えた末に、クーガ君の出した結論はこうである。

「……その、自分はそういう宗教とか革命運動とかの勧誘はちょっと……」
「なに全力で的外れなこと言ってるの!? 正義の組織だってタイトルコールの少し前に言ってるじゃない!」

 そんなこと言われてもなあ、である。
 と、女性の悲鳴が聞こえたのはその時であった。

「なんだ?」
 見れば、女性が酒瓶を持った数人の男達に絡まれているようであった。
「観光客が酔って絡んでるみたいね。ふっ、ちょうどいいわ!」
 キラリコは、ニヤリと笑った。

「クーガ君。貴方、そこそこ強いんでしょう?」
「ま、まあ。小さい頃から修行してましたので」
「じゃあ、とりあえずあの女性を助けてみなさい。世界の真実を見せてあげるわ!」

 えー。という表情のクーガ君だったが、酔っぱらいに絡まれている女性は可哀想であった。
 いろいろ突っ込みたい展開が連続しているが、ここは我慢して、そちらの方に行ってみることに決める。
 すぐさま酔いどれ達がクーガに気付いた。囲まれる。

「……あん? おいこら、なぁに見てんだよ? 文句あるのかぁ、その面はよぉ!?」
「あのー。嫌がってるみたいですし、もう離してあげたほうが……」
「はん? なんだオイ、遊んで欲しいのか? ええ、こんな風になあ!」


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「ぎゃふん!」
 あっさり倒された酔っぱらい達。

「あ、あの。ありがとうございます」
「いえ。お気になさらず。軽い運動でしたので」
 絡まれていた女性はクーガと軽く話した後、手を振って去っていった。

「……さて。この人達はどうしたものか」
 すたすたと歩いてくるキラリコ。なにやら難しい顔をしている。

「ちょっと」
「何か?」
「今、戦闘シーン飛ばしたわね」
「まあその。中篇だからってあんまり長々と描写するわけにも……」
「私そういうの嫌いなのよ。大体、手抜きはどうかと思うわ。手抜きは。というかこのままだと話が進まないじゃないのよ!
せめて評価値で判定しなさい! ほら、あんた達も起きなさい! リベンジしろ!」

 げしげしと倒れている酔っぱらいを蹴り起こすキラリコ。とんでもない女である。
 再び激昂した酔いどれ観光客達が、クーガに襲いかかった……!

 というわけで、この酔いどれ達の白兵評価は5としましょう。装甲も同じで。

「白兵評価たったの5……ゴミだわ」
 そんなこと言っちゃいかん。
「二度も痛めつけるのは、なんだか酷いような気が……」
 ちなみに、二人の着用アイドレスはこんな感じである。

 クーガ 東国人+サイボーグ+大剣士+剣
 キラリコ 西国人+猫妖精+ドラッカー+猫

「よし。じゃあ行きます……!」
 クーガは拳を握り締める。

「はい、ストップ!」
 いきなり止めたのは、キラリコであった。
「な、なんですか。今度は」
「貴方は大事なことを忘れているわ! ほら、確認しなさい! 貴方の着用アイドレスを!」
「は、はあ。えーと、 東国人+サイボーグ+大剣士+剣 ですけど」
「なにか忘れてない? ヒントは白兵戦闘行為」

 しばしの間。

「ええと。分かりません」
「このお馬鹿ー! 燃料消費に決まってるでしょ!? いい? 大剣士は素手だろうがヌンチャクだろうがバナナだろうが孫の手だろうが、白兵戦闘は白兵戦闘! 必ず燃料を1万t消費するのよ! そう決まってるんだから!」

「……それで?」
「消費しないとダメじゃない」
 はあ。とよく分からない表情になるクーガ。

「というわけで、あれを用意したわっ!」
 キラリコが勢い良く指差す方向を見ると、そこにはタンクローリーが停車していた。
「フィーブル藩国の燃料生産地、ダイハラン油田から精製されたガソリンよ!」
 ぐっ、と拳を握り締めるキラリコ。

「使うのよ! さあ、早く!」
「えええええっ!?」
「使わないと吏族にチェックされて罰則金を取られるのよ! さあ、急いで!!」
「……いや、使うって、その……うわあっ!?」
 問答無用でホースからガソリンを放水してクーガにぶっかけるキラリコ。

「ここで肝心なのは必ず1万tじゃないとダメってことよ! 少なかったり多かったりするとチェックされるわ!」
「い、いや、ちょ、待っ、なんか違うような気がしますー!?」
「その通り!」

 よくぞ気付いた! と嬉しそうにホースを放り出して拳を握り締めるキラリコ。 

「I=Dはともかくとしても、燃料で個人の能力が強くなるなんて変な話だわ! それなら石油王は地上最強のはずじゃない! こんなのおかしい! すなわち! これこそがこの世界が虚構であるという紛れもない───」

 異臭漂う中、熱論を始めるキラリコ。
 その瞳がメラメラと燃えている。あ。

 ……大爆発。


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「……ど、どう? これで……この世界が虚構だということが、理解できたわよね……!?」
「ま、まあ……まだ自分達が生きている、ということを考えれば……確かにそうかも……」

 クーガとキラリコは無事だった。衣服を煤けてボロボロになった以外は奇跡的に大丈夫らしい。
 フィーブル港も酷い状態ではあったが重傷者などは出ていない。ただ施設があちこち焦げたりしていた。

 ちなみに、酔っぱらい達はアフロ頭になって尻から煙を出して逃げ去っている。

「そこの二人、動くな!」
 突然の怒鳴り声に、クーガとキラリコが振り返った。
 ここで警察をイメージした読者はハズレである。現れたのはアメショー10機とペルシャ4機であった。
 実に、自由号を除いた現在のフィーブル藩国の所有する全てのI=Dが駆け付けたらしい。

「この爆破テロリスト共め、神妙にしろー!」
「ちょっと、なんでそんなに出動できるのよ! フィーブルの国民数と猫士数じゃ明らかに足りてないじゃない!」
「我々はパイロット志願の訓練生予備猫士である! よってルールを無視した出撃ではないことをご了承頂きたい!」
 やけに吏族や法官に対して律義な奴等であった。

「なんで訓練生が出動してるのよ!?」
「ちょうど演習中だったのだ!」
「出撃の燃料とか資源とかはちゃんと消費してるんでしょうね!?」
「もはや問答無用!」

 さすがに苦しくなったらしい。二人に襲いかかるアメショー10機とペルシャ4機。
 街の中での銃撃は周囲に危害が及ぶので、白兵戦闘を仕掛けてきた。
 ちなみに、全機合わせて燃料消費なしの白兵評価14である。

「ふっ、まあちょうどいいわ。世界の真実を教えてあげましょう。クーガ君、行くわよ!」
「ええええっ!? いや、その、さすがにI=D相手だし、この数は厳しいのでは……」
「こっちよ!」

 走る二人。港から移動して、倉庫が並ぶ狭い路地に逃げ込む。
 しかし、全長が4m〜6mくらいのアメショーとペルシャは簡単に路地を通って追ってきた。だが。

「ここなら! 狭いから1機ずつしか入ってこれないわ!」

 アメショー1機の白兵評価7。装甲6。
 ペルシャ1機の白兵評価8。装甲7。

「さあ、傭兵の出番よ! やりなさいクーガ君!」
「ああもうっ、どうなっても知りませんからね!?」

 振り向いて、ゆっくりと一呼吸。サイボーグ化した腕部や脚部が盛り上がる。
 美しい刃紋の刀身を引き抜いて、クーガは青眼に構えた。

「刀派金剛無双流、クーガ! 参る!」

 東国人+サイボーグ+大剣士+剣
 特殊ありで、白兵評価12。装甲12であった。


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「……おかしいとは思わないの!?」
 キラリコは、ボロボロになって活動停止しているI=Dを見回した後、クーガに向き直った。
「ちょっと頭使えば、あなた一人でフィーブル藩国を滅ぼせるじゃない! こんなの変だわ!」
 というか、未だにアメショーとかペルシャなのが最大の問題なのかも知れないが。

「いや……まあ、その……だいぶ疲れたんですけど……」
 クーガ君、肩で息をしながら喋っている。無傷なのだが、かなり疲労していた。
 途中でAR足りなくて数機を同時に相手してダイスとか振っていたと思われる。

「過去の戦いによれば、1000万の軍勢を200人くらいの人数で撃破したりもしてるし!」
「それはみんなが頑張ったり強かったり作戦が良かったんじゃ……」
「納得できないわっ! すなわち! これが世界が虚構であるという証拠なのよ! それと貴方達!」

 キラリコは倒れているアメショーをげしげし蹴った。
 
「貴方達、どうせ国民に比べたら活躍する場面なんてないんだから、無駄に訓練とかするんじゃないわよ!!」
「うわぁぁぁ! それを言うなぁぁ! 言わないでくれぇ!!」

 猫士達の絶望と悲しみの声が溢れ出した!

「ううう。うううう、猫士のための猫士オンリーのイベントが欲しいにゃ……」
「アラダ相手だと根源力死とかするらしいからずっと待機だったしなあ」
「しくしくしく! ボク達だって絶技を覚えたり小笠原で可愛いあの子に愛を告白したいのにー!」
「活躍したいにゃ! 活躍してテンダイスブログに載りたいにゃ!」
「……たまにでいいから……猫士や犬士のことも思い出して下さい……」
「まあ、俺は秘密戦艦に乗って活躍とかしたけどな!」
「いやあ、実は俺も」
「この裏切り者めぇぇ!!」

 機体から降りてポカポカ喧嘩を始める猫士達。
 泣きながら仲間割れしている彼らを放って、キラリコはクーガを見た。

「これも! この世界が虚構だという真実の一端よ!」
「……えーと。まあ、仕方ないんじゃないかなあ。猫士だし」
「ふっ。随分と面白いことを言うのね」
 うっすらと笑うキラリコ。どこか哀れむように。

「ところでクーガ君。貴方、結構強いのね」
「……まあ。自分は孤児で、藩国のイワヤト山というところでずっと修行してたんです」
「へえ。そうなんだ。大変だったわねー」
「そうですね。でも藩国の、いや帝国のために頑張れたらなあ、と毎日頑張ってましたから」
 そう語るクーガ君。ふうん、とキラリコは頷いて、

「でも残念ね! どんな過去があろうが、貴方が活躍することは決してありえないわ!」
「え、ええええええっ!? い、いきなり何もかも全否定されたっ!?」
「というか、犬士や猫士よりもずっと不可能ね! 無理! 無駄! 無意味だわ!」

 がーん! 巨大な擬音がクーガの頭上に飛び出した。
 愕然としている彼に向かって、キラリコは言葉を続ける。

「今まで一度でも戦場に行ったり冒険に出たりしたことがあるかしら? ないわよね! 何故ならば!」

「それは貴方や私が、NPCと呼ばれる存在だからなのよ!!」
 キラリコの瞳が、怒りで真っ赤に燃えていた。

「え、NPC!?」
「そう! それこそが奴等の支配! 奴等プレイヤーは、世界が虚構なのをいいことに自分達が活躍したり行動したりするために、まるで私達がこの世界に存在しないかのように無視しているのよ! 私が独自に調べた結果、プレイヤーはプレイヤー以外の私達のような存在のことを、NPC! と呼ぶらしいわ!」

「……NPCって、ど、どういう意味なんでしょうか? なんか略称っぽいですけど」
「ふふふっ。それは既に私が解読済みよ。相手を悪し様に罵る時に使う言葉だったわ……」
「そ、そうだったんですか……ちょっと略さずに言ってみてくれませんか?」

 キラリコの瞳が鋭く光った。

「なんとなく・パンチしたくなる・クリティカルに駄目な奴」
「ここまで納得できない略称も珍しい!」
 いや、感心してどうする。

「どうやら世界の真実について理解して貰えたようね!」
「今のやりとりから、どういう解釈したらそういう風に判断できるんですかっ!?」
「今日のクーガ君の働きは見事だったわ。さすが傭兵ね。この調子でこれからもお願いよ! さあ! 奴等プレイヤー達を、
ぎゃふん! と言わせるために! 一緒に戦いましょうね、クーガ君!」

「だから自分は……ああもうっ、話を聞いて下さいってば!」


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 まあ、そんな感じで。
 北海島アイドレス解放戦線の戦いは続く。


 → 第二回

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