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zoom RSS nameless sounds 第一話

<<   作成日時 : 2008/01/11 23:46   >>

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・はじめに
 この企画は、久織えにるがフィーブル藩国で放映中のアニメ原作をしたという設定の元生まれた連載小説です。
 登場人物・設定は基本的にアイドレスと関係ありません。この点、最初にご理解いただけますようお願い致します。

※この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などにはいっさい関係ありません。

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 入り組んだ渓谷だった。
 岩だらけでゴツゴツしている地面、切り立った崖。油断するとバランスを崩して転倒してしまうような土地で、同じフォルムの三機のロボットが三角形のフォーメーションを組んで進んでいる。機体色はバラバラで、先頭から時計回りにピンク、白、黒。

「レーダー感度良好。付近に機影なし」
「ウェザーコンディションは最上級。ただ、陽がちょっと高いわね」

 仲間からの通信。黒い機体に乗り込んだ金岡タケルは、転ばないようにモニターを注視しながら、サブウインドウの表示モードを切り替えた。情報を読み取り、通信する。

「ここの地形は厄介だね。中央に高台があるんだけど、登れるルートが限られてるみたい」

 モードを視線追跡に切り替えて、ラインを描くようにサブウインドウの地形表示に視線を巡らせる。同時に画面情報を他の二機にも転送。ほどなく反応が返ってきた。

「先に上を抑えた方が勝ち、ってやつだな。相手がえっちらおっちら登ってきたところを狙いたい放題だ」
「ヤマト、そういう台詞は砲撃できるような装備を整えてから言ってよね」

 くいくい、と特に意味もなくピンクの機体が右手に携えたマシンガンを上下させる。比較的動きの軽い三機だが、先頭を行くこの機体は特に動きが軽かった。

「集団戦やビッグターゲットでもあるまいし、あんなトロい機体チューンでやってられるか」

 ヤマトと呼ばれた男が乗る白い機体が、携えたショットガンを同じく上下させた。太陽光を受けて銃身が鈍く光る。

「もう、二人とも。今はそんな話をしてる場合じゃないよ」

 左翼を形成する黒い機体の中で、タケルはため息を吐く。モニターに映るのは壁のようにそそり立った崖、地形情報を見ても視界を妨げるように高台が広がっていることがわかる。

「せめて相手の情報がわかりゃあ対策のひとつも立てれるんだがなあ」
「ばーか、それができれば苦労しないわよ」
「ははは。空とか、飛べればいいんだけどねー」

 タケルは前方160°をカバーするメインカメラを少し上面に向けて、青い空を見た。薄くて白い雲が所々に点在しているが、おおよそ快晴と言ってしまっていい天気。鳥が一羽、優雅に空を舞っていた。


「で、どーすんのよ結局。正面、背面、決めてくれないと困るんだけど」
「正面。敵に上抑えられるとキツいからな」
「撃ち合って勝てるかって言われると、またそれも微妙だけどねー」

 タケルは自機のウェポンデータを呼び出した。機体の武装は右手に標準的な性能のライフル、左手にバトルメイスのみである。肩部の武装は積んでいない。長期戦、遠距離での撃ち合いでは極めて不利な武装であり、制圧力にも欠ける。
 機体重量を増やしては動きが重くなるということもあるが、このチーム自体が速攻、強襲をポリシーとするということも大きい。
「まあ、うちほど極端なチームは珍しいからね。上は取れると思うよ」

 タケル達のチームはそれぞれが機動力を重視したセッティングに機体を纏めている。戦闘継続力を捨て、速力と打撃力を両立させていた。速力が高いおかげで今回のような場合も相手方より早く要所を抑えることができる。このメリットは非常に魅力的だ。

「問題は上を抑えても、アドバンテージを得るわけじゃないってことだけどな」
「はいはい、それは聞き飽きましたー」

 放っておくとその場でどつき漫才を始めてしまいそうなヤマトとカナデを、タケルはまあまあと宥める。比喩表現でなく、実際に過去何度か戦闘前に互いの機体を壊しあったことがあるから恐ろしい。

「フォーメーションはいつものでいいわよね。……斥候、出す?」
「いや、だめだ。相手の装備がわからん以上、こちらの手の内も明かしたくない」
「見えてなくても、レーダーに補足されるからねー」

 高低差の関係で下から視認される可能性は低いだろうが、かえってレーダーの圏内に入ってしまう可能性がある。タケル達の機体は砲戦ができない装備のため、敵に現在地を晒すだけで攻撃に移ることはできない。位置情報を知られる=損をするだけだ。
 ピンク――カナデの機体が、暇そうに腕を前後に振った。

「待つのって嫌いなんだけどなー」
「お前の場合は堪え性がないだけだ」

 白――ヤマトの機体は、無駄な挙動を示すことなく淡々と歩を進める。

「昔話でもさ。“待ってるだけじゃ掴める恋も掴めない”って言うじゃない?」
「ああ、空想と妄想入り混じった世界のプリンセス様のお話だったな」
「なにあんた、喧嘩売ってんの? 今なら買うわよ即金で」

 タケルは自身の黒い機体の中でため息を一つ吐くと、止まりそうにない口ゲンカ――ただし一方が皮肉のみを言っている状況でその表現が当てはまれば、だが――をどうやって止めるかを考えていた。宥める言葉シリーズを一通り思い浮かべながら各モニターに目を通す。地形データによると、頂上まであと少しだった。

「そろそろ頂上だよ。勢い余って走り抜けちゃわないよう注意してね」
「……りょーかい」
「わかった」

 それにしても、今日のカナデは機嫌が悪いとかよく絡むとかいうより、情緒不安定な感じがする。それをヤマトはわかっているのかいないのか。
 指定通信でヤマトにのみメッセージを送る。

『カナデ、何かあったのかな? 相当気が立ってるみたいだけど』
「あの日なんだろ。重いし鬱だしいっそ殺してっ! てな」

 ――ガンッ!

「聞こえてんのよこのセクハラ男!」
「おぉー怖えぇ」

『図星だそうだ』
『わざとやるのはどうかと思うよ……』

 通信を切り替えないというヤマトの悪ふざけを注意しながら、タケルはレーダーに目を落とす。狙い通り先に頂上に展開することに成功したが、敵も全速でここに向かってきているはずだった。そろそろ会敵しそうな時間ではある。
 今の調子で敵に出会ったら、カナデが暴走しそうな気がしなくもない。

「最終確認するよ。フォーメーションはトライアングル、戦術は誘導・挟撃でいいね」
「トップはあたしが行くわ。タケル、援護頼りにしてるわよ」
「俺は?」
「あんたは特攻。一機くらいは巻き添えにするのね」
「ひでぇ」

 カナデが駆るピンクの機体が離れていく。

『で。ヤマトはどうする?』
『どうするもこうするもねえよ』

 すすーっと、滑らかな動きを見せるヤマトの機体。移動ではないのだから速度を出す必要はない。足回りを確かめるようにステップを踏んで、その場でくるりと回ってみせる。

『サポート、頼むぜ!』

 タケルが止める間もなく、ヤマトの白い機体が遠ざかっていく。
 カナデといいヤマトといい、どうしてこうも個人プレーに走るのだろうか。二人の技量は“その筋では”有名だけれど。
 せめて、もう少し仲良くしたらいいのにとタケルは思う。

「ちょっとヤマト、付いて来ないでよ!」
「ばーか、誰がお前に付いて行くかっての。方向が同じだけだ……っと」
「――っ、ヤマト!」
「オーケイ。オープン・コンバット!」

 通信にノイズが混じる。爆音。レーダーに敵を示す赤い点が3つ表示される。ヤマトとカナデ、タケルの機体のOSは戦術レベルで仮想連結されているため、各機体が得た情報を共有できるのだった。
 敵を示す赤い点、味方を示す青点が目まぐるしく動き始める。

「重装備で突撃たぁ豪勢だな。グレネードにロケット、バズーカそれにミサイルか」
「欲張ったって鈍くなるだけなのに」

 マシンガンの射撃音が回線を通して伝わってくる。カナデのマシンガンは装填数を犠牲に連射性と威力を高めたタイプだ。軽装甲の機体なら蜂の巣になるだけの火力はあるし、短時間なら弾幕としても申し分ない。

「二機食いついた! ヤマト!」
「わかってる。先に行け!」

 通信を聞きながら。
 黒い機体の中で、タケルはすぅ、と深呼吸する。一種の儀式のようなもので、軽く目を瞑り小さくおまじないの言葉を口ずさんだ。
 ライフルを構え、照準を覗き込む。タケルの機体のFCSは補足速度と範囲を重視した近距離用だ。ほどなく豆粒のように小さな機体が三機視界に入ってきたが、特にどうすることもできない。
 普通は。カタログ通りなら。

(……そこっ!)

 先頭を行く機体が射線上に入った瞬間、タケルは引き金を引いた。ロックオンされていない銃弾は先頭の機体の頭を越すような弾道で飛んでいく。装備したライフルの有効射程ぎりぎりで発射されたそれは、寸前で先頭の機体に躱された。
 着弾を確かめず、タケルはもう一度引き金を引く。ブースターを噴かし、全出力で射撃と同時に急加速。

『ビンゴ! タケル、やるぅ!』

 小さく半円を描くようにして後続二機に向き直ったピンクの機体の中で、カナデは小さく口笛を吹いた。
 先に放たれた銃弾はすぐ後ろを追従してきていた機体に着弾、予想外の事態に速度を落としたと同時に後から放たれた銃弾が直撃。バランスを崩したところでようやく反撃を試みるかに見えたが、既に遅い。
 カナデはマシンガンを構え、斜めにすれ違うように高速移動。トリガーを引き続ける。重装備の敵方2機は慌てたのかバズーカとグレネードで応戦してきた。

「当たらないわよ、そんなの!」

 軽装備の機体にはやや過剰と思われる火力に晒されながらも、カナデには余裕があった。弾速が遅いし、連射が効かないから防衛火力にもならない。当たらず阻止線も張れずでは意味がない。
 カナデの視界の端に黒い機体が映る。バトルメイスを構え、こちらに向けて猛突進してくる黒い機体。撃ちっ放しのマシンガンがカチカチと弾切れを告げる。リロード。弾幕が途切れた。

「――っ!」

 カナデの機体がグレネードの爆風に巻き込まれた。衝撃でバランスが崩れる。僅かな硬直。バズーカの銃口が向けられる。食らえばただでは済まないだろう。
 咄嗟に目を瞑る。カナデは、目を瞑る。

「はぁーーーっ!」

 裂帛の気合いが回線を駆けた。

 声に呼び起こされるように、カナデは瞑っていた目を開く。
 バズーカをカナデの機体に向けていた機体は、真横から黒い機体の突進を食らってバランスを崩していた。火花が散る。装甲に噛み付くように食い込んだバトルメイス。続けて至近距離からライフルの射撃を受け、よろけたところにカナデのマシンガンが放つ銃弾が吸い込まれていく。爆発。

「まずひとつ!」
「カナデ、大丈夫?」
「損傷軽微、問題ないわ」

 味方がただ一方的に蹂躙されるのを見て、残る一機は何を思っていたのだろうか。
 味方にも被害が出るためグレネードは撃てない。かといってロケットでは連射性の悪さで弾幕にならず、ミサイルは着弾までに時間がかかる。救援しようにも方法がわからないといった感じだった。
 ようやくながらマシンガンを構える。だが、既に遅すぎた。
 タケルとカナデの二機による集中砲火。単純に火力は倍、ターゲット分散により被弾率は半減、一言で表すと勝負にならないだけのアドバンテージがある。

「これでふたつ!」

 爆発。

「おーおー、相変わらず早いね。お二人さん」

 共有回線にヤマトが顔を出した。合間に混じるノイズと射撃音からして、まだ戦闘中のようだ。

「ヤマト、そっちはどう?」
「問題ねぇよ。もうすぐ終わる」

 爆発音。
 敵を示す赤い点がレーダー上から全て消失した。

「さっすがヤマト、余裕ね。レベルが違うって?」
「当然。わかってるねぇ、カナデさん」
「ばーか、皮肉に決まってんでしょ」
「まあまあ二人とも」

 戦闘が終わった途端に口論し始めるカナデとヤマトに苦笑しながら、タケルはモニターに視線を移した。
 タケル機、損傷軽微。撃墜数0。
 ヤマト機、小破。撃墜数1。
 カナデ機、小破。撃墜数2。




 青い空には鳥が優雅に飛んでいる。今日も平和な戦争日和になりそうだった。






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