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zoom RSS たそがれの空、猫と傭兵

<<   作成日時 : 2008/12/16 01:29   >>

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「圧倒的な力で支配者を廃し、自由と平等を謳う国を作り上げた、イレギュラーと呼ばれる名無しの傭兵の話を知ってる?」

 それは唐突にその一言から始まった。

「いえ、存じません。」

 片眼鏡をかけた銀色の猫士。今は部屋と同じセピア色。
 この国では、奴隷種族である猫士も、電子妖精も平等に扱う。「だからそれで?」そのあからさまにバカっぽい一言を一番の誇りとする。だから、彼はカイザーと呼ばれている猫士だった。

 まあ、ピー(禁則事項です)だから無理はないけどね。話を振った傭兵はさして興味も無さそうに電波を発信した。

 窓の外には、真っ赤に輝く夕日。闇が迫れば迫るほど強く輝き、そして消える。
 その輝きはまるで烈火の様で、でもそれは刹那の輝きで、太陽の様な陽性の色でもなく、だから人を何とも言えない切ない気持ちにさせる。窓辺に立つ傭兵は、人にその風景を幻視させる奴だった。

「一見それは理想郷に見えた。
 力があれば何をしても許される世界で、無敵の力に守られた平等の世界ってね。
 でもね。けっきょく阿呆とヘタレどもがここぞと集まってきて、駄目になってしまったんだよ、その国は。」

「………」

「まあ、民衆ってのは愚かなものなんだよね。
 それは少しでも客観的に物事を見れるのなら、いろんな出来事から簡単に分かる。
 仕方ないよ。生きてる奴ってのは、できるだけ楽したいって思うのが性なんだから。
 どんなに立派なのが居ても、集まれば集まるだけそれは薄まってしまう。

 ただ、この話の愚かなのは民衆だけじゃない。傭兵もだと思うね、僕は。
 結局戦う事しか知らなかった彼は、純粋過ぎてそれ以外の何もできなかったんだと、そう思う。
 だから、そういう結果になったんだよ。」

「その中途半端に遠回しな自虐の科白はなんですか…」

(いあ、ぶっちゃけ今この国に藩王なんていないし、だから30人の王の物語だよ、もしくは30とその他大勢、だって横一列が売りの国だし…

 傭兵は高速強制スクロールで心中を述べる作業を、途中でやめた。

(まあ、つまるところこの国は王を必要としてるって事なんだよね。)

 ヒステリックな14歳に修正される自分を幻視する傭兵。

「いや、つまらない話だなと思って。」
「ええ、そうですね。」

「自分に王を名乗る権利などないなんてのは、結局のところ逃げる為の口実になってしまってるって、それくらいは分かってる。」

「………」

 猫士の眼鏡が光を反射して輝いた。表情は読み取れない。

「私はこう思います。
 愚かでないものは既に人でないと。
 それは妖怪や物の怪の類です。
 まあ、この知類溢れる世界でこの様な言い回しをするのは、些か不適切な気はしますが。」

「はぁ…カイザーが設定通りに普段から働いてくれればなぁ…」
「面目ない…」

 へにょんと耳を垂れて、小さくなるカイザー。

(か、かわいいッ)

 まあ、彼もゲームシステムの被害者でFA。

「王とか人気とかそんなのはどうでもいい。そう言うのは戯言屋さんに任せておけばいい。
 この名がクランとなった時からそれは決まっている。フィーブルの名を名乗る者は、その身が砕け散るまで、護るべきものの盾となる為に存在するとね。
 ここには僕の敵がいるんだ。間違いなくね。そろそろ戦おうと思う。」

「はい。」

 窓の外には闇が訪れていた。

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