小村佳々子@へぽGS加筆案

 本当のいい女はいい男だけが気付く魅力を持っている。


 女がそれに出会ったのは、それが海から出てきたからだ。
 女……少女と女性の境目くらいの年齢に見えたが――女は旅行船の定期便で、北海島にやってきていた。
 丁度そこでは、大きなロボットの引き上げ作業が行われていた。聞いた所によれば、撃雷号と言うらしい。
 何でも、この国で作ったロボットが、宇宙から落ちてきたらしい。命を賭けて世界の危機を救った英雄と言う声もあれば、負けた事を残念がる声もあった。
「壊れちゃったんだ……」
 引き上げられているロボットは酷く損壊しており、頭が残っているから、ぎりぎりロボットに見えるという程度の残骸でしかなかった。
 ただ、引き上げられたそのロボットの顔に、女は何かデジャビュのようなものを感じた。
 もう原型も留めていないが、そのロボットはとても彼女の知っているロボットに似ていた。壊れた姿も、どこか似ていた。
「壊れちゃったなぁ……」
 突然横からした声の主を見ると、隣で一人の男が、船の欄干に寄りかかりながらため息をついていた。女は、眼鏡がおそろいだな、と関係の無い事を思った。
「っと。失礼。少々思いいれがありましてね、アレには」
「撃雷号でしたっけ? あの子」
「ええ、フィーブル藩国製大型I=D、全自動消防対災害システム撃雷号。我らの誇り……でした」
 男はやれやれ、と煙草に火をつける。
 女はびっくりした。
「ああ、ご安心を。勿論壊れたまま放置するわけがありません。ちゃんと修理……改修計画はありますよ。撃雷号は生まれ変わるんです」
 男は、てっきり、自分の言葉が過去形だったのが、不味い印象を与えたのではないかと心配して弁明した。
 しかし、女は違った。そんなところが問題ではなかった。
「あの子も、消防車なんですか?」
「消防車……ああ、それはいいですね。うちの藩王が聞いたら喜びそうな表現だ。今度提案してみよう」
 男はよほど落ち込んでいたからなのか、それともよほどその眼鏡が曇っていたからなのか、女の微妙なニュアンスも、真剣な表情も見逃した。
「まぁ、しかし修理したところでパイロット問題はいかんともしがたい。他国からACEを供出してもらおうにも現状じゃあな……っと、これは失礼。今のは聞かなかったことに。一応機密といいますか」
「乗る人、いないんですか?」
 女は必要な所だけ見逃さないように聞き返してくる。耳聡い人だと始めて男はその女の聡明さに感服した。軽く姿勢をただし、話始める。
「アレは乗り手を選びます。その力とその誇りに相応しい、乗り手をね。残念ながら、僕じゃアイツの性能を半分も引き出せる事か……」
「あ、あの。相応しいかどうかは判らないんですけど!」
 女は急に男に詰め寄った。両者の眼鏡がずれた。

「もしかしたら私、乗れるかもしれません。似た子に乗っていた事があるんです」

 ああこれは、確かに男の眼鏡が曇っていたと断じざるを得ないだろう。

 彼は結局、この女が小村佳々子だと言う事にも、小村佳々子がいい女だと言う事にも、眼鏡を外すまで気付かなかった。
===
2案改:

 女が落ちてきたのは、薄暗い倉庫の中だった。
 巨大な何かが、その体をキャッチする。その際、バキとかメキとか変な音が聞こえたが、別に女の体にそれほどの痛みがあったわけではなかった。。多少なりとも身体は打ってしまったが。
「いたた……何?」
 女を受け止めたのは巨大な手だった。
「って、手?」
 視線でそれを辿っていけば自ずと腕へ、肩へと目が行き、最後に顔でそれと目があった。
「うわ…!」
 巨大なロボットであった。気が遠くなるほど巨大な外見。胸の前で受け止められたはずなのに、そこから上だけでビルほどの大きさがあった。
「た、助けて、くれたの?」
 答える代わりに、ロボットの目が明滅した。女はそれがイエスだと、論理ではなく理解した。
 少し深呼吸をして状況を整理してみる。
 そうして、自分が上から落ちてきて、このロボットに助けられた事だけは推測で理解できたが、それで状況が改善するわけでもない。
「あの、下ろして、くれない?」
 しかしロボットは、今度こそうんともすんとも言わない。何となく、ではあるが困っているようにも見えなくも無かった。
 それでもう一度見れば、ロボットは全身を機械に繋がれて固定されており、彼女を助けてくれたであろう片腕だけが、無理やり引き剥がしたように壊れていた。
「無理して、助けてくれたんだ」
 ロボットの目がまた明滅した。
 このロボットは自動で動くのだろうか。きっと優しいロボットなのだ、と少ない根拠で思った。そして少なからず壊れてしまったロボットに対して、申し訳ない気持ちが一杯になった。
「おい、G改が動いてるぞ!」
 そこに遅れて、しかし大慌てでにゃーにゃーとやってきたのは、人と猫だった。
「…猫?」
 鳴き声を聞いて下を恐る恐る覗き込んでみると、人と猫がやっぱり上を見上げて驚いている。自分を見て彼らは更に驚いたようだった。
「人にゃ、人がいるにゃ!」
「作業着を着てないぞ、ここは立ち入り禁止のはずだ!」
「あのー、ここに居るのはその、事故と言うかー。謝りますから誰か下ろしてくださいー」
 現場は大騒ぎになった。地獄の釜をひっくり返したような騒ぎである。
「ど、どうなっちゃうんだろう?」
 とは言え、高さ30m近いロボットの掌の上ではどうする事もできずまちぼうけることしばらく、ロボットの拘束が外された。
 ロボットはやはり勝手に動いてヒザをつき、女を床に優しく下ろす事に成功した。
 とは言え、ロボットの手はとても大きかったので、手から下りるだけでも人の手を借りながらの作業になったのだが。
「あの……ありがとう」
 女は壊れてしまった事を謝ろうと思ったが、最初に口をついて出たのは、無理をしてでも助けてくれたロボットへのお礼の言葉だった。
 ロボットは、ヒザを付いた体勢のまま、やはりモノを言う事はなかったが、瞳を明滅させて答えた。

 ロボットの名を、G系大型I=D1号機改/全自動対災害消防システム自由号と言う。
 その全自動消防車に助けられた女の名前は、小村佳々子と言った。

 それは運命の出会いであった。

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