高位西国人
フィーブル藩国は、内戦の渦中にあった。
悲しみ溢れる絶望の海で、それでも、心が折れる寸前で膝を折らない者達が居た。
/*/
L:高位西国人 = {
t:名称 = 高位西国人(人)
t:要点 = ゆったりした服装,灰色の髪,装飾品
t:周辺環境 = 王宮,ソファ,大きな団扇
t:評価 = 体格1,筋力1,耐久力1,外見1,敏捷1,器用0,感覚1,知識2,幸運0
t:特殊 = {
*高位西国人の人カテゴリ = 高位人アイドレスとして扱う。
*高位西国人は根源力25000以下は着用できない。
*高位西国人は一般行為判定を伴うイベントに出るたびに食料1万tを消費する。
}
t:→次のアイドレス = 砂漠の騎士(職業),寵姫(職業),商人(職業),藩王(特別職業)
}
/*/
フィーブル藩国における高位西国人とは、内戦の危機に陥った藩国で、リーダーシップを発揮したり、何らかの要因から重要な地位を占めるとみなされたり、とりあえず、そんな事どうでもいいから国を守る、と言って戦うために立ち上がった者達における、通称である。
そこから転じて、フィーブル藩国の高位西国人は、行動する者、行動力の有る者に対して、他者から与えられる褒め言葉や尊称であり、もしくは、偉そうにしている国民への揶揄、蔑称など、複雑な意味を持っている。決して高位西国人であるから偉いとか、そんなことはまるでなかった。
高位西国人は、よく大きな団扇を持っていた。これは砂漠の国であるフィーブルにおいて、行動的な高位西国人はエアコンの恩恵を受けている暇が無く、作業中のほんの少しの暇にも涼を取れるようにする工夫である。彼らはいつも、砂漠と海に挟まれたこの藩国で、誰かのために汗を流している。
王宮には、彼らの労をねぎらうための、ソファやティーセットなどを設置した休憩室が設置されたが、高位西国人は寛ぐために、これらの休憩室を使用することなどは殆ど無い。利用する時と言えば、ソファをベット代わりに仮眠室として利用する事ばかりであった。己の寝る間さえも削って尽力する、彼らの最後の寝所が、このソファであった。このためせっかくの休憩室も、ちょっと汚い。
身だしなみに気をつけている暇もない彼らの、せめてもの身だしなみとして、着脱の手間がかからない、ゆったりとした服装が好まれた。それらは全て自前で調達した品々であり、統一感に欠けるきらいはあったが、ゆったりとしたローブなどの衣服、外套などは、藩国支給の制服の上から着る事が可能であり、砂漠の砂避けや日よけにも大変役立った為、行動的な者には大変好まれた。
また、市街地を歩くとき、暴徒化した国民に不用意に目をつけられない偽装の役割も持っていたらしい。フィーブル藩国では外出の際にこういった外套や上着を着用する事は一般的であるのだが、高位西国人の多くは着替える暇もなく活動する為、屋外・室内問わず着たきり雀であったという。
一部、装飾品を身にまとう者達も居たが、このほとんどは、通信機やナショナルネット接続用の情報端末機器などが装飾用にデザインされたものであり、外交や交渉に必要な最低限の装飾性を得ながらも、突然の事態に対応できるよう最大限の機能性を有していた。整備部品等の消耗品を持ち歩く場合は、ベルトポーチや服の内ポケット等に見えないよう収納される事が殆どで、なおかつ殆どの高位西国人はこれを常備していた。
フィーブルにおける高位西国人の装飾品とは、彼らの外見を飾らず、フィーブル藩国の高位西国人の在り方を飾るモノであった。
装飾品の本質とは、案外そのようなものなのかも知れない。
/*/
「ああ、ごろごろしたいにゃ~! 忙しいにゃ~!」
「ストレスで死にそうだにゃ~! 昨日も愛しのマイダーリンとケンカしちゃったにゃ~!」
そう言いながら、めまぐるしく書類を作成していく猫達。
ここは王宮。猫の手も足りない忙しさとはまさにこの事で、猫達は器用に尻尾で団扇を駆使して涼を取りながら、大量の書類の海で、猫が泳ぐように格闘していた。ちなみに疲れ果てた猫は、休憩室のソファで死んだように寝ている。
王宮は、まるで戦場だった。
瀟洒な建築物の、その内側は、ただ汗と涙と努力で満たされていた。
ただ彼らの在り方の美しさを世に示すためにのみ、古びてなお、その外観の美しさがあるのだろう。
「あー、この書類出来上がったから例のルートで告知だにゃ」
「あいにゃ。ほい、ぺったり」
にゃんこ達が、ぽちぽち作った書類に、別の猫達が肉球判を押して、王城の窓から飛び出していく。
そこにサイボーグがやって来ては、やはり窓から出動していく。
「こら! 危ないにゃ! 猫用通路を人アイドレスが使うんじゃないにゃ!」
「悪いが急いでるんだ、ごめんよっと!」
「猫の話を聞くにゃー!!」
王宮は、まるで戦場だった。
ただ問題は、王宮の外も本物の戦場と同じ程度には酷かったということだが。
/*/
外套を宙にはためかせ、王城の2階から跳ぶサイボーグは、さながら正義のヒーローのようであるが、彼らには子供の拍手喝采、弱者の歓声に包まれるわけでもなければ、驚き戸惑う悪党の呻き声があるわけでもない。そこにあるのは、砂まみれの街と、暴れ狂う市民と傷病者、悲劇と絶望の叩き売り市場だった。
砂の上に軽やかに降り立って駆け出す猫達に続き、サイボーグ隊が砂を破裂させて着地する。
「外に出るのは早いが、足を抜くのが面倒ですな」
よっこらさ、とそれぞれ足を引き抜くサイボーグ達。そのリーダー格が、小さく笑った。
「違いない。警備チームは予定ルートに別れて、被災者の保護救出を最優先。それが終わり次第、暴走する市民の鎮静、および暴走行為の鎮圧に努めよ」
「ACEの連中はどうします? 連中、また素手で飛び出していっているらしい。まぁ、俺達も素手じゃありますけど」
サイボーグ隊は己の機械の体を除けば完全な徒手空拳で、武装らしい武装は何一つ所持していなかった。
「うちのACEは、俺達より10や15も年下のお嬢様か、おじいちゃん猫だぞ」
「つまり保護対象ってことですか?」
「本人が希望するならな。希望しないなら、協力して任務を遂行する」
リーダー格がそう言って歩き出すと、他のサイボーグもそれに習った。
「何というか、情けなくて言葉も無い状況ですな」
「情けないくらいで人命が守れるなら安いもんだと思っとけ。各員、これより指示および報告はナショナルネット接続で行う。接続タイミングあわせ! ……3、2、1、接続開始!」
リーダーのピアスが、きらりと光り、そこから電子妖精が電脳にダイブした。
情報の共有が行われる。
/*/
「ごめんね。今の僕達には自由号どころか、君達を動かす力も無い」
明かりの消えたI=D工場。物言わぬ機械達を見上げて、整備士が言った。
藩国にあるI=Dは現在、全て動力を停止して、燃料が抜かれ、起動キーには何重ものロックが欠けられていた。犯罪に使われないための処置であった。
フィーブル藩国では、I=Dを運用する為に必要なパーツや武装などの資源も底をついており、I=Dを運用する日が再び来るまでには、長い歳月と苦労が必要と思われた。
だがスペックシート通りでなくても、武装せずとも、作業稼動の範囲でなら、動かす事は出来る。テロ行為や横流しなど、I=Dが犯罪に利用される危険もあるが、人員が切迫した警備隊に、運用予定の無いI=Dを警備してもらうわけにはいかなかった。
涙を呑んでの、封印措置であった。
「おい、そろそろ避難しよう。この辺り、最近やべぇから」
「うん、判ってる」
同僚に声をかけられて、荷物をまとめる。
I=D工場は、資源不足から稼動を完全にストップしていた。
愛用の整備器具は、小型のものをまとめてベルトにかけた。機械いじりは得意だから、避難先でも何か修理や整備で役に立てるかもしれないと考えたからだ。設備復旧を手伝うのも、いいだろう。
同僚が、何かの布を手渡してきた。
「何これ?」
「工場長からの退職祝い。上に着ときゃ、工場勤務者だってぱっと見わかんないだろってさ。砂も避けれるし」
「哀しいくらい安い退職金だね」
空元気で冗談を言ってから、そのすっぽりと長いローブを被って、整備士は呟いた。
「身を隠すのも、逃げるのも。いつかここに戻ってくる為だ。僕達は諦めたりしない。だから……」
己の家族同然である、物言わぬI=D達を見上げる。彼らは何も答えない。答えないが。
「待っててくれ。きっと僕達は、ここに帰ってくる」
(イラスト:久織えにる)
(文章:へぽGS)
(文章構成協力:戯言屋)
★高位西国人の取得による個人着用アイドレスの組み替え登録
高位西国人+整備士+パイロット+名パイロット
組み替え元:西国人+整備士+パイロット+名パイロット
高位西国人+整備士+パイロット+ホープ
組み替え元:西国人+パイロット+整備士+ホープ
高位西国人+猫妖精+ドラッガー+猫の決戦存在
組み替え元:西国人+猫妖精+ドラッガー+猫の決戦存在
高位西国人+サイボーグ+歩兵+ハッカー
組み替え元:西国人+サイボーグ+歩兵+ハッカー
悲しみ溢れる絶望の海で、それでも、心が折れる寸前で膝を折らない者達が居た。
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L:高位西国人 = {
t:名称 = 高位西国人(人)
t:要点 = ゆったりした服装,灰色の髪,装飾品
t:周辺環境 = 王宮,ソファ,大きな団扇
t:評価 = 体格1,筋力1,耐久力1,外見1,敏捷1,器用0,感覚1,知識2,幸運0
t:特殊 = {
*高位西国人の人カテゴリ = 高位人アイドレスとして扱う。
*高位西国人は根源力25000以下は着用できない。
*高位西国人は一般行為判定を伴うイベントに出るたびに食料1万tを消費する。
}
t:→次のアイドレス = 砂漠の騎士(職業),寵姫(職業),商人(職業),藩王(特別職業)
}
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フィーブル藩国における高位西国人とは、内戦の危機に陥った藩国で、リーダーシップを発揮したり、何らかの要因から重要な地位を占めるとみなされたり、とりあえず、そんな事どうでもいいから国を守る、と言って戦うために立ち上がった者達における、通称である。
そこから転じて、フィーブル藩国の高位西国人は、行動する者、行動力の有る者に対して、他者から与えられる褒め言葉や尊称であり、もしくは、偉そうにしている国民への揶揄、蔑称など、複雑な意味を持っている。決して高位西国人であるから偉いとか、そんなことはまるでなかった。
高位西国人は、よく大きな団扇を持っていた。これは砂漠の国であるフィーブルにおいて、行動的な高位西国人はエアコンの恩恵を受けている暇が無く、作業中のほんの少しの暇にも涼を取れるようにする工夫である。彼らはいつも、砂漠と海に挟まれたこの藩国で、誰かのために汗を流している。
王宮には、彼らの労をねぎらうための、ソファやティーセットなどを設置した休憩室が設置されたが、高位西国人は寛ぐために、これらの休憩室を使用することなどは殆ど無い。利用する時と言えば、ソファをベット代わりに仮眠室として利用する事ばかりであった。己の寝る間さえも削って尽力する、彼らの最後の寝所が、このソファであった。このためせっかくの休憩室も、ちょっと汚い。
身だしなみに気をつけている暇もない彼らの、せめてもの身だしなみとして、着脱の手間がかからない、ゆったりとした服装が好まれた。それらは全て自前で調達した品々であり、統一感に欠けるきらいはあったが、ゆったりとしたローブなどの衣服、外套などは、藩国支給の制服の上から着る事が可能であり、砂漠の砂避けや日よけにも大変役立った為、行動的な者には大変好まれた。
また、市街地を歩くとき、暴徒化した国民に不用意に目をつけられない偽装の役割も持っていたらしい。フィーブル藩国では外出の際にこういった外套や上着を着用する事は一般的であるのだが、高位西国人の多くは着替える暇もなく活動する為、屋外・室内問わず着たきり雀であったという。
一部、装飾品を身にまとう者達も居たが、このほとんどは、通信機やナショナルネット接続用の情報端末機器などが装飾用にデザインされたものであり、外交や交渉に必要な最低限の装飾性を得ながらも、突然の事態に対応できるよう最大限の機能性を有していた。整備部品等の消耗品を持ち歩く場合は、ベルトポーチや服の内ポケット等に見えないよう収納される事が殆どで、なおかつ殆どの高位西国人はこれを常備していた。
フィーブルにおける高位西国人の装飾品とは、彼らの外見を飾らず、フィーブル藩国の高位西国人の在り方を飾るモノであった。
装飾品の本質とは、案外そのようなものなのかも知れない。
/*/
「ああ、ごろごろしたいにゃ~! 忙しいにゃ~!」
「ストレスで死にそうだにゃ~! 昨日も愛しのマイダーリンとケンカしちゃったにゃ~!」
そう言いながら、めまぐるしく書類を作成していく猫達。
ここは王宮。猫の手も足りない忙しさとはまさにこの事で、猫達は器用に尻尾で団扇を駆使して涼を取りながら、大量の書類の海で、猫が泳ぐように格闘していた。ちなみに疲れ果てた猫は、休憩室のソファで死んだように寝ている。
王宮は、まるで戦場だった。
瀟洒な建築物の、その内側は、ただ汗と涙と努力で満たされていた。
ただ彼らの在り方の美しさを世に示すためにのみ、古びてなお、その外観の美しさがあるのだろう。
「あー、この書類出来上がったから例のルートで告知だにゃ」
「あいにゃ。ほい、ぺったり」
にゃんこ達が、ぽちぽち作った書類に、別の猫達が肉球判を押して、王城の窓から飛び出していく。
そこにサイボーグがやって来ては、やはり窓から出動していく。
「こら! 危ないにゃ! 猫用通路を人アイドレスが使うんじゃないにゃ!」
「悪いが急いでるんだ、ごめんよっと!」
「猫の話を聞くにゃー!!」
王宮は、まるで戦場だった。
ただ問題は、王宮の外も本物の戦場と同じ程度には酷かったということだが。
/*/
外套を宙にはためかせ、王城の2階から跳ぶサイボーグは、さながら正義のヒーローのようであるが、彼らには子供の拍手喝采、弱者の歓声に包まれるわけでもなければ、驚き戸惑う悪党の呻き声があるわけでもない。そこにあるのは、砂まみれの街と、暴れ狂う市民と傷病者、悲劇と絶望の叩き売り市場だった。
砂の上に軽やかに降り立って駆け出す猫達に続き、サイボーグ隊が砂を破裂させて着地する。
「外に出るのは早いが、足を抜くのが面倒ですな」
よっこらさ、とそれぞれ足を引き抜くサイボーグ達。そのリーダー格が、小さく笑った。
「違いない。警備チームは予定ルートに別れて、被災者の保護救出を最優先。それが終わり次第、暴走する市民の鎮静、および暴走行為の鎮圧に努めよ」
「ACEの連中はどうします? 連中、また素手で飛び出していっているらしい。まぁ、俺達も素手じゃありますけど」
サイボーグ隊は己の機械の体を除けば完全な徒手空拳で、武装らしい武装は何一つ所持していなかった。
「うちのACEは、俺達より10や15も年下のお嬢様か、おじいちゃん猫だぞ」
「つまり保護対象ってことですか?」
「本人が希望するならな。希望しないなら、協力して任務を遂行する」
リーダー格がそう言って歩き出すと、他のサイボーグもそれに習った。
「何というか、情けなくて言葉も無い状況ですな」
「情けないくらいで人命が守れるなら安いもんだと思っとけ。各員、これより指示および報告はナショナルネット接続で行う。接続タイミングあわせ! ……3、2、1、接続開始!」
リーダーのピアスが、きらりと光り、そこから電子妖精が電脳にダイブした。
情報の共有が行われる。
/*/
「ごめんね。今の僕達には自由号どころか、君達を動かす力も無い」
明かりの消えたI=D工場。物言わぬ機械達を見上げて、整備士が言った。
藩国にあるI=Dは現在、全て動力を停止して、燃料が抜かれ、起動キーには何重ものロックが欠けられていた。犯罪に使われないための処置であった。
フィーブル藩国では、I=Dを運用する為に必要なパーツや武装などの資源も底をついており、I=Dを運用する日が再び来るまでには、長い歳月と苦労が必要と思われた。
だがスペックシート通りでなくても、武装せずとも、作業稼動の範囲でなら、動かす事は出来る。テロ行為や横流しなど、I=Dが犯罪に利用される危険もあるが、人員が切迫した警備隊に、運用予定の無いI=Dを警備してもらうわけにはいかなかった。
涙を呑んでの、封印措置であった。
「おい、そろそろ避難しよう。この辺り、最近やべぇから」
「うん、判ってる」
同僚に声をかけられて、荷物をまとめる。
I=D工場は、資源不足から稼動を完全にストップしていた。
愛用の整備器具は、小型のものをまとめてベルトにかけた。機械いじりは得意だから、避難先でも何か修理や整備で役に立てるかもしれないと考えたからだ。設備復旧を手伝うのも、いいだろう。
同僚が、何かの布を手渡してきた。
「何これ?」
「工場長からの退職祝い。上に着ときゃ、工場勤務者だってぱっと見わかんないだろってさ。砂も避けれるし」
「哀しいくらい安い退職金だね」
空元気で冗談を言ってから、そのすっぽりと長いローブを被って、整備士は呟いた。
「身を隠すのも、逃げるのも。いつかここに戻ってくる為だ。僕達は諦めたりしない。だから……」
己の家族同然である、物言わぬI=D達を見上げる。彼らは何も答えない。答えないが。
「待っててくれ。きっと僕達は、ここに帰ってくる」
(イラスト:久織えにる)
(文章:へぽGS)
(文章構成協力:戯言屋)
★高位西国人の取得による個人着用アイドレスの組み替え登録
高位西国人+整備士+パイロット+名パイロット
組み替え元:西国人+整備士+パイロット+名パイロット
高位西国人+整備士+パイロット+ホープ
組み替え元:西国人+パイロット+整備士+ホープ
高位西国人+猫妖精+ドラッガー+猫の決戦存在
組み替え元:西国人+猫妖精+ドラッガー+猫の決戦存在
高位西国人+サイボーグ+歩兵+ハッカー
組み替え元:西国人+サイボーグ+歩兵+ハッカー